【レポート】地域づくりの拠点視察交流バスツアー 「うなぎの寝床」×「ヤマベリング・ラボ」(6月4日開催)
今回の第3回目となる視察交流バスツアーでは、「地域資源を活かした起業」をテーマに、地域の特産品を再発掘し、地域をつないでいる文化商社「うなぎの寝床」と、「山」をひとつの資源に新たなアイデアを生み出し、里山の地域活性化にも寄与している「ヤマベリング・ラボ」を視察しました。
日時:平成30年6月4日(月)8:30~16:00
場所:『うなぎの寝床』(福岡県八女市本町267)
『ヤマベリング・ラボ』(福岡県八女市黒木町桑原889-3)
参加者: 23名
内 容:
1 起業支援セミナー ①
「『作り手』と『使い手』をつなぐ地域の文化商社『うなぎの寝床』ができるまで」
講師:株式会社うなぎの寝床 代表取締役 白水 高広(しらみず たかひろ)氏
「地域文化の継承のために、地域資源を顕在化させ、外部交流・交易を起こし、その価値を現代に問い続ける」という素晴らしい行動理念の下、地元、八女の地にしっかり軸足を置きながら、県外や全国、海外にも及ぶ事業を展開されている「株式会社うなぎの寝床」。
「目の前にあることに対応していたらこうなってしまいました。」と冷静な代表取締役の白水高広氏にその真意をお話していただきました。
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最初は、自分が気に入ったものを販売する店としてオープンしましたが、それだけでは地域文化を継承できないと感じ、地域文化を探求しつつ、地域の経済循環にも貢献し、地域文化の継承を支援してくれる顧客を創造していくという流れをつくりました。そして、さらに地域の博物館、NPO、行政、中小企業、商社などを巻き込む事業へと転換していきました。つまりはこれが「地域の文化商社」である所以です。
そして、着目した地域資源の一つが久留米絣(くるめがすり)です。久留米絣は従来、年齢層の高い顧客に向けて、高級品として販売されていました。これがもんぺに転用されたのにも物語があります。
最初は「うなぎの寝床」で昔ながらの久留米絣のもんぺを取り扱っていました。そこに「久留米絣の着物幅の布で作れるもんぺの型紙が欲しい。」と要望があり、型紙を提供したところ、着物幅に合わず、型紙を作り直し、細身のもんぺになりました。これが若者に大変な人気となり、織り元さんが作る分だけでは需要に間に合わなくなって、うなぎの寝床が生地を買い、縫製所で作るようになりました。そうしているうちに「卸もしてほしい。」と言われはじめ、いつの間にかもんぺメーカーのようになりました。
白水氏は「もんぺの特徴はそのままに、ターゲットを変えただけで売れるようになりました。久留米絣は綿100%の織物で通気性もよく、大変機能的です。その『機能的』ということは口コミで広がる大切な要素になるし、伝統的で文化的なデザインを広報する上でも大切な要素になります。」と話されました。「もんぺが、日本のジーンズのような、日常生活に溶け込んだファッションとして着られるようになったら嬉しい。」という想いがあったからこそ、多くの顧客やファンを獲得できたということです。
さらに、『地方には人がいない。ではどう売るのか?』という課題に向き合い、久留米絣のターゲットも含んだSNS、チラシ、ホームページ、通販チャンネルといった新しい技術を駆使し、販売に繋げていきました。
その結果、当初名乗っていた地域伝統工芸品などの「アンテナショップ」の枠に収まりきれなくなり、昨年からは、「地域の文化商社」という新たなカテゴリーを用いるようになりました。「地域の貴重な文化的資源を活用し、新たなビジネスを産み出して、同時に地域も元気にする。」という「循環」の中でうなぎの寝床は本当の意味での成長を続けています。
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《講師プロフィール》
1985年佐賀県小城市生まれ、大分大学工学部福祉環境工学科建築コース卒業。2009年8月厚生労働省の雇用創出事業「九州ちくご元気計画」に関わり2年半プロジェクトの主任推進員として動く。同事業は2011年グッドデザイン賞商工会議所会頭賞を受賞。その後、2012年7月にアンテナショップ「うなぎの寝床」を立ち上げるとともに、現在まで地域文化商社として成長させている。他地域・他社のコンサルティングや制作、アドバイス、リサーチなども精力的に行っている。2015年 1月 株式会社化。2016年 12月 MONPE グッドデザイン賞受賞 / 2016年グッドデザイン賞受賞沖縄総合事務局 地域団体商標PR動画制作 / 2016年度八女商工会議所 伝統工芸品商品開発 専門家/
2 ランチ交流会
昼食会場は、Uターンで戻ってこられた息子さん夫婦が地元のお母さんと営む八女の地産地消の店『黒木のごちそう たかっぽ』。Uターン起業のヒントにもなるお店で、地元の食材や手作りこんにゃくなどをふんだんに使った田舎料理に舌鼓を打ちながら参加者同士の交流を行いました。
ちなみに、店名の由来は、昔、竹筒に入ったご飯を「たかっぽ」と呼んでいたところから来ているそうです。
http://kankou.chikugolife.jp/search/shop/detail.html?id=157
3 起業支援セミナー②
「山で輪になり山辺の未来をCo-creation!! Yamaberinglab」
講師:森と人をコトでつなぐ Moribito 代表 森 庄(もり たいら)氏
八女市の新たなコミュニティー拠点【ヤマベリング・ラボ】を作り、地元の方々と「よそ者」が一緒になって地域の活性化を進める事業を始めた森庄代表にお話をしていただきました。森氏のことを「まちづくりの仕掛け人」と呼ぶ人もいるように、ヤマベリングプロジェクトが立ち上がって以来、多種多才な人々が笠原地区に訪れるようになっています。
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私は、家族と一緒に「お茶の里」笠原に地域おこし協力隊として移住してきました。つまり、ここでは「よそ者」です。移住してきた「よそ者」としての立場や役割を認識した上で、地元の方と共に、地域の魅力を引き出し、より一層すばらしい場所にして、活性化を進めることが協力隊としての仕事です。そこで、まずは積極的に地元の方々を何度も訪ね、時には酒を酌み交わすなどして、地道に信頼関係を築いて行きました。
この時に築いた信頼関係が、「ヤマベリング」というプロジェクトや、【ヤマベリング・ラボ】という拠点につながりました。
「ヤマベリング」は、八女市黒木町笠原地区で、「よそ者」「地元」「行政」が一緒になって「山(yama)で輪(ring)になる(be)アクション」、つまり、輪になって山の未来や豊かさ、暮らし方や遊び方について考え、語り合うというもので、全5回のエコツーリズムを行政の協力のもと企画・実施し、各分野で活躍している講師を招いて、皆で歩きながら地域資源を掘り起こしました。
そして、その活動を通して、Uターンした若者が古民家をリノベーションしたゲストハウスをオープンしました。このゲストハウスは、辿り着くのに時間のかかる山奥にあるがゆえに日本の原風景が広がり、その中での滞在で昔ながらの日本を感じることができることから、外国人観光客も多く訪れ、ゲストハウスのご近所の方々との交流や、お茶摘み体験で大変好評です。
この「ヤマベリング」を通じて、ゆるやかでありながらも、確実にコミュニティーが形成されていき、それがコミュニティーの拠点【ヤマベリング・ラボ】という形になって現れました。このヤマベリング・ラボは地域の空き家をリノベーションし、バーカウンターや、ライブラリースペースなどがあるユニーク空間となっています。この空間を生かして、DIYワークショップや、黒木かたろう会(自分たちのまちを自分たちの手で、自分たちのくらしを自分たちの手で、より良くするために「かたろう」という会)という活動などを行っており、福岡市をはじめ、遠くは県外からも、多くの「よそ者」がこの笠原地区を訪れ、地域の活性化が一層進んでいると感じています。
《講師プロフィール》
1981年岡山県生まれ。スノーボードインストラクター、非鉄金属商社を経て、これからの暮らし方や価値に向き合い、家族とともにお茶の里笠原に移住。水害直後の地域の復興支援、過疎化する集落の支援とともに、里山ゲストハウス天空の茶屋敷、農作業応援隊、yamabering,YAMECONVALLEY、八女木育など新たなコミュニティや事業を生み出す企画を立案し実行中。水害で大部分を失ったきのこ村キャンプ場は、行政、企業、地域と連携しそれぞれの強みを活かした新たな試みにより、次世代に誇れるものを未来につなぐ事業の画策中。
参加者からは、
「起業というと自分にはまだ無理と思っていましたが、視察研修に参加してやる気がわいてきました。」
「リスクばかり考えていましたが、お話を聴いて勇気づけられました!」
「同じものでも見せ方によってこんなに変わる!」
「付加価値をつけることの重要性を改めて認識しました。」
「ヤマベリング・ラボの森さんのように、地元が変われるためのきっかけを自分が創りたいです。」
「自分より若い人たちがカッコイイ仕事をしていたので、自分もカッコイイことをしていきたいと思いました。」
「今まではものづくりを通して自分を発信していきたいと思っていましたが、遠賀町をもっと愛して、遠賀を発信していきたいと思いました。」
などの声が聴かれ、起業を目指す皆さまにとって大変充実した研修となりました。
視察を受け入れてくださった『うなぎの寝床』の皆さま、『ヤマベリング・ラボ』の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!