遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)

「第8回遠賀町ビジネスプランコンテスト キックオフフォーラム~遠賀で始めた、私のビジネス~」 第49回PIPIT交流会(6月21日開催)

2023年 07月 07日

 今回のPIPIT交流会は、今年度の「遠賀町ビジネスプランコンテスト」へのキックオフとして、「遠賀で始めた、私のビジネス」をテーマに、遠賀町からグローバルに活躍されている事業家と、遠賀町ビジネスプランコンテスト(ビジコン)で受賞されてビジネスを展開されている起業家をお招きして、遠賀から事業を展開する思いや、ビジコン参加の成果などを伺い、これからビジコンに応募しようという方へエールをいただきました。

 今年の4月にオープンした「おんがみらいテラス」の会場に発表者と参加者が集まり、またオンラインでも多くの方々にご参加をいただきました。

◆第8回遠賀町ビジネスプランコンテスト開催予告

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 PIPIT事務局より、募集期間や審査基準など開催概要をご案内しました。
 詳細は、「第8回遠賀町ビジネスプランコンテストを開催します」のページをご覧ください。
 https://pipit-onga.jp/2023/07/post-100.html

◆起業家プレゼンテーション

〇《遠賀町で活躍する企業経営者から》

 『西から昇る太陽』
 渡邉 裕美 氏 (日進化学株式会社 代表取締役社長)

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 日進化学は、渡邉氏の父親が52年前に遠賀町で創業した、ポリエチレンフィルム製品を製造販売している、BtoBビジネスの会社です。

 渡邉氏は、高校生くらいまでは、かなりの引っ込み思案でした。英語が話せるようになりたいと、大学の英文学科に進学しましたが、約2年たっても何も英語で話せていないことに気がつき、アメリカの大学へ行きました。

 ここで、自分一人では何もできないこと、これまでは周囲の人たちに支援されていたことに気づき、行動しようと決意して、自分から話しかけ、何でも人に聞くようになりました。行動することによって、それまで知らなかったさまざまなことを学びました。

 アメリカの大学を卒業した後は、千葉県で事務員として就職しました。約27年間、働くことが楽しく、転勤で環境が変わることも勉強として取り組んでいました。

 当時、仕事と同様に楽しんでいたことが、テレビゲームでした。オンラインゲームから生まれたグループの一人と結婚し、「夫婦で移動パン屋を開業する」という夫との夢も持つことができました。

 そんな時、父から毎日のように「日進化学に入社しないか」という電話がかかってくるようになりました。ずっと断り続けていましたが、ある日の電話で、真剣に考えてみようと思うようになりました。日進化学のことは、いい人たちが働いている、いい会社だと思っていたので、もし自分が後を継がなかったら、その人たちはどうなってしまうのかと気になってきました。

 夫婦の夢や夫の気持ちも気になりましたが、夫は「応援するよ」と言ってくれました。社長としての経験や学びが全くなく、社員がどう思っているかも不安でしたが、「これから学べばいい」と決心して、日進化学に入りました。

 最初に、社員が会社のことをどう受け止めているかを知りたくて、会社のキャラクターを募集しました。次に、自分の力で何かを生み出す喜びを社員たちに感じてもらいたくて、名刺チーム、ECサイトチームなど、小さなチームをつくりました。他にも、異業種交流やビジョン策定などを行ってきました。

 昨年は、会社と社員、また遠賀町のことも知ってもらい、地域貢献にもつなげようと、「eスポーツイベント」を開催しました。

 これから目指しているのは、「西から太陽が昇る」ことです。常識にとらわれず固定概念をくつがえす。誰もやらないならば日進化学から始めようと思っています。新しいことや面白いことは遠賀町から、日進化学からチャレンジしたいと考えています。



〇《これまでの受賞者から》

 『これからのビジネスは社会問題を解決する視座とチャレンジ精神』 
 岡﨑 慶子 氏(酵素玄米 心玄 代表・第7回ビジコン グランプリ受賞者)

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 岡﨑氏は福岡市在住で、管理栄養士と登録販売者という2つの資格を持っています。昨年、50歳を前に、残りの人生をどう生きるかを考えるようになり、第7回遠賀町ビジネスプランコンテストに応募し、グランプリを受賞しました。

 2022年10月には『おむすび心玄』というお店を始めました。酵素玄米のテイクアウト専門店で、特にごみを出さないよう環境に配慮した「量り売り」が好評です。当初はお客様が来てくれるか不安でしたが、インスタグラムなどSNSを駆使して情報発信を続け、今では完売するようになりました。

 コロナ禍での健康志向もあり「玄米を食べたい」という潜在需要は多いものの、「炊飯が面倒」、「おいしく炊けない」という人が多いこと、また、白米では競合が多く、差別化が難しいことから、酵素玄米で事業化することにしました。

 酵素玄米とは、玄米に小豆と塩を加えて炊き、数日かけて保温したもので、疲労、高血糖、ストレスなどに効果があり、高齢者から中高年、乳幼児など全ての人に必要不可欠な栄養素が含まれています。

 おむすび屋を事業とするために、ソーシャルビジネスとして社会課題の解決を目指すことの必要性を学びました。それは、健康格差社会に対して、玄米で解決や支援を考えることでした。子ども食堂への支援活動も近く始めます。

 岡﨑氏が常に考えていることが、3つあります。SNSでの情報発信やSEO対策など「変化に対応」、「お客様の声」を聞き満足だけでなく感動を与えること、「チャレンジ精神」を忘れずにやり続けることです。

 起業をしたいけれど悩んでいる人に対しては、PIPITのアドバイザー等へ相談することでアイデアがたくさん出てくると勧められました。これからは女性が活躍しなければいけない、自分も女性の活躍できる場をつくっていきますと結ばれました。



 『身体の不自由な方の生活を楽しくするために自助具を広めたい』
 川口 晋平 氏(作業療法士・第7回ビジコン 準グランプリ受賞者)

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 川口氏は、田川市の病院に勤めている作業療法士です。

 脳卒中の片麻痺や、事故などで片手生活を送るようになると、身体機能として日常生活ができなくなるばかりか、自信喪失やうつ病など、精神疾患にもつながってしまいます。

 身体に障がいを負うと、ボタンが留められない、靴下が履きにくいなど、いろいろな困難が生じます。これまで、自助具は市販されたり、病院で作製されたりしてきましたが、両手使用が前提だったり、種類が少ない、手作りするスタッフが減少するなど、問題点が多く存在していました。

 作業療法士として、脳卒中関連のSNSグループで情報交換する中で、「片手で開けられるペットボトルオープナーが作れないか」という問い合わせがあり、CADや3Dプリンターもほとんど経験がありませんでしたが、試行錯誤で作ってみました。さらに「親指の当たるところを丸くしてほしい」などの声が寄せられるようになり、色数も多く、POPなイメージとなりました。

 購入者から感謝のメールや手紙をいただき、片手生活で困っている方が日本中に多くいることに気がつきました。そこで、自助具の種類を増やして販売すると、さらに多くの手紙やメールが届いたため、障がいがある方の生活を自助具で支援することを進めています。

 現在の販売先はECサイト「nico shop」が主ですが、遠賀町のビジコンで受賞後は、起業家の方が販売に協力してくれています。また、福祉施設での聞き取りやオンラインでの情報収集によって、ニーズの掘り起こしも行っています。

 退院後の生活に困らないように自助具を開発し、身近に自助具がある世界を目指しています。病院や施設でも購入しやすいように工夫をして、また「nico shop」に行けば探しているものが何でもあるように、自助具の種類を増やしています。

 日本中には、片手生活で困っている方がたくさんいます。自助具を広める活動は社会貢献に見えて、実は将来の自分に対する投資になるのではないかと考えています。


 春野光琳氏(第3回ビジコン 中高生の部グランプリ受賞者)
 現在、東京の大学で映像やデザインを学んでいる春野氏から、ビデオメッセージが届き紹介しました。

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 ビジコンで受賞した「馬頭岳改造計画」は実現できませんでしたが、PIPITで相談に乗ってもらい一緒に考えたこと、山に登ってワクワクしながら構想したことが、今のさまざまな活動に活かされ、つながっています。

 今後は、社会の中でビジネスとして成立するものも考えてみたいと思っています。

◆意見交換・質疑応答

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 意見交換では発表者に対して、商品の原価率と価格設定、模倣品対策など、さまざまな質問や意見が出されました。

 参加者からは「実際にビジネスを考えた方の話が聞けて参考になりました」「起業はとてもハードルが高いと感じていましたが、少し身近になりました」などの感想をいただきました。

 ご登壇いただきました発表者の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。