第17回PIPIT交流会『オーガニックの食と農業をライフワークとする女性起業家に学ぶ』(8月31日開催)
今回は、オーガニックの食と農業の分野で事業を展開されている女性起業家お2人をお招きして、女性ならではの視点でお話しいただきました。
金髙愛氏は、新鮮野菜を使った料理教室「オーガニック教室アトリエLa CUCINA」の運営、食と農に関する商品開発や地域の特産品開発、飲食店などの食のメニュー開発、大人の食育レッスン等々、「人・食・農をつなぐ」食のトータルプロデュース事業を展開されています。中でも料理教室では、本場で修業したイタリアン、和惣菜やお菓子作りなどが学べると人気です。"食"を通して、日本の農業や地域の活性化、食料自給率の向上、食の安心・安全、健康増進など、社会貢献へ繋げるべく活動されています。
田中美穂氏は、オーガニック農家さんをサポートし、共に商品開発をしていく「Go Organics Japan(ゴーオーガニクスジャパン)」を糸島に立ち上げ、平日は東京でIT関連、土日は福岡で農業関連の事業を展開されています。糸島を中心とした有機農家の想いとともに、農産物を国内だけでなく海外へ向けて拡大することを目指しています。管理職の経験で身につけた販売戦略・立案、コミュニケーションとリーダーシップ。そして、幅広いソフトウエアのスキルがオーガニック農家さんをサポートする「Go Organics Japan」の事業に活かされています。
通常の交流会以上に、女性のご参加が格段に多く、とても華やかな会となりました。食や健康、美容などに関する事業を展開されている参加者も多く、起業までの道のりやアプローチに違いはあっても、食や環境に対する熱い想いは同じ。プレゼンテーションの後も、試食を楽しみながら、大いに盛り上がりました。
・『食の仕事あれこれ~生産~加工~販売~テーブル』
La CUCINA Japan 代表 金髙 愛 氏
イタリアンのシェフから、フードコーディネーターや6次産業化プランナーとして、活躍の場を広げた金髙氏。起業のきっかけは、20代後半に体力の限界を感じ、勤務先のレストランを退職したことから始まりました。
まずは、管理栄養士をしながら、「料理講師」業をスタート。厨房の中からは決して見えなかったものが次々と見えはじめ、やがて「オーガニック」と出会います。料理から食材、そして、その背景にある生産者、自然、環境に関心を抱いた金髙氏は、関連分野への知識を深めようと積極的に行動し、各種資格も取得していきます。農業、伝統食、日本酒、スローフード...。さまざまな知識と経験、人脈を得て、日本各地からイタリアまで足を運ぶうちに、フードコーディネート、商品開発等へと事業が展開。料理がテーブルにのるまでの、あらゆる工程を熟知している強みを活かした食のトータルプロデュース、そして、福岡発のこだわり食材を使ったブランドも立ち上げるに至りました。
綿密なプランもなく走り出し、決して順調とは言えなかったこれまでの日々。くじけずに走り続けられた秘訣を問われると、「自分を信じて、とにかく前に進むことを考えました。」と答えた金髙氏。料理人としてのキャリアをベースに、興味を広げ、かつ、深めていったこと。そして、高感度アンテナを張り、さまざまな人・モノとの出会いをしっかり自分流につなげていったことが、事業の発展につながっているように感じました。
社名の「ラクチーナ」とは「厨房」の意。オリーブをくわえた鳩がコーポレートマークとなっています。自身の原点を忘れず、小さな身体ながら、糧を求めて力強く羽ばたく姿は、金髙氏と重なるような気がしました。
・『やりたい事&できる事、これからの複業という選択肢について』
Go Organics Japan 代表 田中 美穂氏
3.11東日本大震災を機に、福岡と東京の二拠点生活をスタートさせた田中氏。その3年後には、IT教育サービス「オンユアサイドジャパン」とオーガニック食材販売「Go Organics Japan」という全く違う分野の二つの事業を起業します。そのスピード感と発想に圧倒されながら話を聞いていくと、その裏にある、練り上げられた考えやコンセプト、さらには彼女の「生き方」そのものが見えてきました。
起業することになった直接のきっかけは、とある人物との出会い。その縁と外資系企業でのキャリアから、当初は海外での展開を考えていたそうです。しかし、まずは日本、自分の足元からと思い直し、糸島に着目。オーガニック食材の卸・小売、有機農業の支援活動をスタートします。そのミッションは、再生型農業と持続可能な暮らしをサポートしていくこと。そして、それが自身のライフワーク、一生をかけてする仕事、と思うに至ったのです。
「自分のやりたいことは何だろう?一体なにができるんだろう?」と4年間それを考え続け、ノートに書き足したり、消したりしてきたという田中氏。そして、「好きなことだけで、やっていけるのか?」という問題。人生が90年ならば、30代までは種まき期、それを育てる期間を経て、70代に収穫していく...。そんなイメージもふまえて、いま自分が生活のためにできるITの仕事と、一生の仕事にしたいオーガニック農業を並行してやっていくこと、それが「複業」というわけです。
ITとオーガニックという両極に思える分野、しかも東京と福岡。心身の負担を心配する声があがると、「ストレス発散も出来るので仕事という感覚ではない。」と笑顔が返ってきました。また、価格設定や顧客確保など、良い循環や刺激が生まれているとも。 3.11を経験したからこそのバイタリティーとスピード、ミッションへの高い自己管理能力を感じました。
金髙様、田中様、ご参加いただきました皆さま、ありがとうございました。