遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)

~遠賀町で起業しよう!~「第3回 おんが町起業家アカデミー」12/8・12/9開催

2018年 12月 10日

 12月8日、9日の2日間にわたり、「おんが町起業家アカデミー」を開催しました。「起業家アカデミー」は、起業に向けた最初の一歩を踏み出したいと考えている方、事業の計画を具体的に策定している段階の方、あるいは起業して間もない方を対象とした集中講座です。

 通算3度目となる今回のアカデミーでは、5名の専門家による密度の濃いカリキュラムを実施しました。起業に必要な知識・スキル・マインドセット(考え方)などを学びたい、忘れないようにもう一度振り返りたいと考える意欲的な受講者が、PIPITに集いました。

第1講座「地域の持続可能性とソーシャルビジネス」
講師:山口 純哉 氏(長崎大学 准教授)

yamaguchiDSC05313.JPG

 第1講座では、「ソーシャルビジネス」概論の解説からSDGs*の理念までを学びました。社会性・事業性・新規性などの特徴を持つとされるソーシャルビジネスは、変化し続ける社会情勢の課題を解決する重要な手法のひとつです。

 講義では、農業・漁業へITを応用した課題解決の事例を通して、ソーシャルビジネスの考え方・定義を理解した後、グループに分かれ、それぞれの思い描く事業を、講義で学んだことを踏まえつつ説明し合いました。「もっと世の中の役に立つ為には」という社会貢献や社会的課題の解決など、ソーシャルビジネスを視野に入れた起業のヒントを得た講座でした。

* SDGs(Sustainable Development Goals):「持続可能な開発目標」。経済・社会・環境の調和がとれた社会を目指す、2030年までの世界共通の目標。17のゴールと169のターゲットから構成される。

第2講座「人に伝わる提案書の作り方~提案におけるロジックとは?~」
講師:石本 康久 氏(凸版印刷株式会社 人巻き込み型事業プランナー)

ishimotoDSC05394.JPG

 続く第2講座は、マーケティングの第一線で活躍するプランナーによる、人に伝わる提案書作りの講義でした。

 最初に「提案におけるプランニングとは?」と題して、プランを作り出すプロセスの解説がありました。プランニングは、「事実(現時点での客観的な構造)」「課題(現状と目標のギャップ)」「行動(合理的で魅力的な行動)」という3つの要素を基礎構造として利用するということ、そしてそれらを常に視覚的・直感的に捉えていることが重要だと言います。

 続いて、「提案におけるロジックとは?」として、企画ロジックの仕上げ方や構築手順、さらには行動を魅力的に伝える説得法などが紹介されました。ロジックの仕上げ方には、「事実」「課題」「行動」のウエイト配分が異なる、5つのパターンがあります。企画内容や提案相手によって、その中から最適なものを選択します。また、構築手順は、「アイデアが先に生まれる型」と「物事を積み上げてアイデアが生まれる型」の2つのパターンがあるので、その時の自分の思考パターンを自覚して進めることと、企画書のページ順にはとらわれず、いろいろな角度から提案内容を練るべきだと学びました。そして、行動に魅力が乏しいのであれば、事実を徹底的に見直し、事実と行動が結びつかないと感じたら、それぞれを再検討するとともに、課題を洗い直す作業をします。

 どんなに素晴らしいプランを持っていても、それを形にして人に伝えなければアイデアのままで終わってしまいます。3時間に迫る熱い講義を受講したことで、起業に向けた確かな第一歩を踏み出したことだと思います。

第3講座「YouTube、動画をビジネスに活かす!~明日から役立つ概論から実践まで~」
講師:秋吉 浩志 氏(九州情報大学 准教授)

akiyoshiDSC05457.JPG

 2日目は、ビジネスに活用できるツールとして、動画シェアリングサイト『YouTube』を取り上げた講座からスタートしました。

 ビジネス戦略において、動画をWebマーケティングの一環と位置付け、ファン獲得や顧客化を促す手法として活用することは、今や不可欠な要素となっています。中でもYouTubeは、他のSNSとの親和性・連動性も極めて高く、Googleとの連携があるため、Googleマイビジネスというアプリを使えばさらに高い集客効果が期待できるツールです。とくに消費者の投稿によって作られる消費者生成型メディアであるため、これまでとは違った目線の情報が消費者から注目されることが多く、購買行動につながりやすい効果を発揮します。しかも、比較的簡単なテクニックさえ身につけていれば、誰でも自由に配信ができるのがYouTubeの汎用性の高さです。

 講義の後半は、YouTubeのライブ配信を実際に体験しました。最後に、起業もYouTubeの動画配信も、まずは「やってみよう」と始めてみることが大切だという言葉で締められました。

第4講座「子育ての当事者目線で街を人を社会を変えた!『chance challenge change 』25年も続く女性起業家物語!」
講師:濱砂 圭子 氏(株式会社フラウ 代表取締役)

hamasunaDSC05486.JPG

 午後の第4講座では、福岡で初めての地域密着型子育て応援情報誌を発刊するなど、生活者起点で事業を展開する女性起業家に学びました。

 濱砂氏は、平成5年(1993年)に起業しました。まだ女性の社会進出が普通のことではなかった当時の全国育児情報誌は東京の情報ばかりで、「地方で命を育てている母親たちには役に立たない。」と、育児サークルの仲間たちと共に、自費出版で女性の目線に立った情報誌の制作を始めました。26年が経過した今では、子育て支援を軸にイベント、セミナー、研修へと事業は広がり、さらに女性活躍推進事業へと展開しています。それは事業の枠を超え、企業や地域、社会そのものを変えようという運動となっています。

 講義で紹介された起業を成功に導くノウハウには、起業家に必要な力、営業戦略、計画を実行するポイントなど、理念からテクニックといった具体的なステップが網羅されていました。起業することは特別なようで決してそうではなく、想いがあれば成し遂げられるものだと教えられた講義でした。

第5講座「NPO法人で稼ぐ!多様な指定管理と映画館と文化・芸術・アートで仕掛ける経済循環のまちづくり!」
講師:石田 達也 氏(NPO法人宮崎文化本舗 代表理事)

ishidaDSC05518.JPG

 最後の講座を担当した石田氏は、アメリカ留学や、地元宮崎で英会話教室や飲食店経営などをさまざまな生活や仕事を経験した後、阪神大震災を契機にNPO法人を立ち上げました。

 NPO法人と聞くと、ボランティアの延長などのイメージを持たれやすいものですが、石田氏が手掛けるNPO法人では、映画館運営といった自主事業や、映画祭の企画やイベントの事務局代行、そして指定管理などの受託業務を通じて、ビジネスとしてしっかりと成立しています。計画の頓挫や自身の病気などで度重なる困難に見舞われたことで挫折もありましたが、多くの人との関わりを持っていくことで、多角的な事業を展開されるようになりました。

 「失敗から学ぶ」という心構えを今でも大切にし、「諦めると新しいことには挑戦できない。」という姿勢から受講者が得たものは多かったようです。

講師対談

アカデミーDSC05542.JPG

 第5講座の後には、第4・5講座を担当した2名の講師による対談が行われました。「起業したいが何から始めたらよいのか。」という質問に対し、「自分を分析・棚卸を行った上で、自分の好きなものを伸ばせばよい。」という回答や、「理解者や協力者を最低でも4~5名は持つべき。」などといった具体的な助言がありました。全身全霊で事業に取り組んできたお二人の生き様と覚悟が込められた言葉に、受講者は大いなる勇気を与えられてアカデミーは幕を閉じました。

起業家として羽ばたくために

shugoDSC05545.JPG

 第一線で活躍する起業家や専門家による本格的なプログラムは、起業の基本から必須スキルやツールなどを学び、情報を得るのに大いに役立ったことだと思います。それと同時に、先輩起業家たちの生の声を耳にすることで、起業家精神の真髄を体感し、「何のために起業するのか」「ゴールは何か」を再確認した受講生も多かったことでしょう。

 受講者の数名は、介護・福祉、教育、農業、業務改善など、それぞれが目標とする分野で起業を目指しています。業種こそ違いますが、同じ場で学んだ仲間として、今後もつながりを大切にしてもらいたいと願っています。そして、それぞれが目指す「起業」に向かって意欲的に歩みを進め、起業家として活躍する日を楽しみにしています。