遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
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「SDGs時代の働き方と暮らしを創る起業家~AI×土木、繊維の循環~」第47回PIPIT交流会(1月17日開催)

2023年 01月 25日

 今回の交流会は「SDGs時代の働き方と暮らしを創る起業家~AI×土木、繊維の循環~」をテーマに、2名の起業家にご登壇いただきました。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、オンラインにて開催しましたが、今回も多くの方々にご参加いただきました。

◆起業家プレゼンテーション

〇プレゼンテーション1

『安心して暮らせる社会インフラを未来へ~シングルマザーの雇用機会創出を目指し起業~』

 森川 春菜 氏 オングリットホールディングス株式会社 代表取締役

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 森川氏は2018年に、福岡市のスタートアップ支援施設において起業しました。企業理念「人の役に立つ事業を行い、その事業が結果的に 社会貢献に成ることを信じ、私たちはここに集まっている」は、社員が17名の時に全員でワークショップを開催し、みんなの言葉を紡いでつくられました。
 会社では、橋梁やトンネルなど構造物の点検と、現場で使うロボットやAIの開発、さらに現場未経験者へのアウトソーシングを柱として事業展開しています。

 構造物の点検には大きな課題がありました。道路附属物の老朽化による事故、点検のための膨大な手間、技術者の高齢化と人材不足等です。森川氏は、これらの課題を「ロボット×AI技術×未経験者」で解決しています。
 開発したAIを活用した図面作成ツールにより、点検内容をチョークで描いた構造物の写真から画像処理を行い、図面作成に掛かる手間を大幅に削減。AIでの抽出が困難な部分を子育てや介護などで時間に制約がある女性や、障がい者や引きこもりの方等の未経験者にアウトソーシングすることができ、新たな雇用の創出につながっています。

 森川氏の起業のきっかけは、シングルマザーの友人が働く場所の相談に来たことでした。人手不足のゼネコンと、働きたいが未経験で専門知識がない人とのお互いの課題をツールによって解決したいと、4年間かけて開発しました。福岡市の橋梁点検をこのツールを使い外国人に図面化してもらったところクオリティの高さが評価され、事業化したそうです。
 女性起業家としてのやりがいは、夫の転勤などで環境が変わることがなく、働きやすい環境が提供できること。特に建設関連は結果が見えるので社会への貢献感も得られます。
 起業するために重要なことは、諦めずに本気で取り組むこと。一つ行動を起こせば環境も変わります。ヒト、カネ、モノが何もないところからの出発でしたが、福岡県の「よかとこビジネスプランコンテスト」でファイナリストまで進んだことで、事業計画書の書き方などを教えてくれる人とも縁ができました。

 AIに手順を教え込ませる作業を未経験者でもできるようにすることで、「就職弱者」の雇用創出が実現できました。福岡から全国へ展開し、地域の課題を解決したいと考えています。



〇プレゼンテーション2

『洋服を「ゴミ」から「資源」に、繊維の廃棄物から紙を作り活用する~SDGs への取り組み~』

 渡邊 智惠子氏 一般社団法人 サーキュラーコットンファクトリー 代表理事

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 渡邊氏は、「繊維のゴミを資源に」をミッションとして、「サーキュラーコットンファクトリー(CCF)」という法人を設立しました。繊維をゴミから資源にするにはいくつか方法がありますが、リサイクル率の高さと、地球温暖化防止への効果から、「繊維から紙」にする方法に取り組んでいます。
 「綺麗な地球を子どもたちに」を理念に、地球温暖化の中で、世界のゴミの14%を占める繊維ゴミを良い形で循環させることで地球環境に寄与できることを目指しています。

 現在、回収コットンから紙を作って活用する「100Project」がスタートしています。パートナー企業が130社あり、100事例ができた時には本にして、より多くの人たちに知ってもらう計画です。コットン100%のフラワーや、回収ハンカチで作った紙、老舗和菓子店やチョコレート店の包材、Jリーグのユニフォームを紙にするプロジェクトなどが進んでいます。
 またCCFには建築チームがあり、古紙と繊維ゴミから壁紙を作っています。人体に害があるビニールクロスに代わる建築材料として、室内環境改善コンテストでもグランプリを受賞しました。
 昨年は青森県五所川原市の立佞武多(たちねぷた)で、高さ10メートルの牛若丸をコットン100%の紙で作りこの牛若丸はその後、紙をはがして7メートルのクリスマスツリーに作り直され、名古屋の百貨店ロビーに飾られました。イベントに参加して頂くことで市民参加型のプロジェクトになることを期待しています。

 渡邊氏はもう一つ、増えすぎた鹿による生態系の崩壊をなんとかしたいという思いから、「森から海へ」という財団を運営しています。日本には約400万頭の鹿がいて、その内の100万頭を毎年捕獲する必要があるのですが、現実には約60万頭しか捕獲できていないために鹿が激増しています。捕獲された鹿のうち、ジビエなどで活用されるのは10%で、残り90%は廃棄されているのが現状です。
 命を無駄にしないために、鹿肉とオーガニック材料を使ったペットフード「鹿のめぐみ」、オーガニックコットンから作ったペットの下着「綿のめぐみ」という商品を作っています。

 二つの団体は、どちらも「ゴミから資源に~循環型社会の実現~」というテーマで取り組んでいます。



◆意見交換・質疑応答

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 意見交換では登壇者に対して、急激な組織拡大への取組み方法や、最初にテーマに出会ったきっかけと事業化の経緯等、様々な質問や意見が出されました。

 参加者からは「お二人の発想の豊かさと行動力に感動しました」「素晴しい起業家の視座高いお話を聞くことができました」等の感想をいただきました。

 ご登壇いただきました講師の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。