「自分たちの地域の未来をどうしたいですか?」第21回PIPIT交流会(12月26日開催)
今回の交流会は、発表者の大半が学生とあって、冬休みの昼間に開催しました。制服姿も目立ち、いつもとは違った雰囲気です。学生起業家や未来の起業家同士どんな話が聞けるのか、交流からどんなエネルギーが生まれるのか、互いに緊張しつつも、期待している様子が伝わってきます。
「大学生と復興と起業」*******************************
田中 惇敏さん (九州大学、NPO法人Cloud Japan 代表理事、株式会社おかえり代表取締役、NPO法人HOME-FOR-ALL事務局長)
九州大学に籍を置きながら、行政職員、NPO職員、社長といった顔も持ち、日本各地を飛び回っている25歳の田中さん。スマートなのは身体だけではなく、失敗から多くを学ぶ聡明さも際立っていました。
最初の起業は、東日本大震災後の気仙沼での経験。ボランティアの派遣団体の設立と、その宿泊場所の整備、さらに地域への恩返しと空き家リノベーション。昼間は「絵本カフェ」として子育てママの雇用を生み、地域活性化も実現させました。そうした「空き家活用モデル」が、復興庁主催のビジネスプランコンテスト「新しい東北」で、企業賞を受賞。今や学生起業家を牽引する存在となっています。
しかし、その過程では、孤独や赤貧を味わい、上司の過労死や大怪我も経験したそうです。そういった壮絶な経験を経ての、現在の爽やかな笑顔と人あたりの良さ。笑いのツボも心得ていて、その言葉は、同性代はもちろん、大人にも響いてきます。今は、全国10カ所の空き家を活用し、ゲストハウスを運営。気仙沼ゲストハウス「架け橋」の様子も写真で紹介してくれました。事業もひとつではなく複数やることで、上手く循環していくといった話も大いに参考になりました。
終盤には「怖いものは怖いと認めればいい」「本当に好きじゃなくてもいい」「ビジョンはなくてもいい」と直球アドバイス。さらには「自分はゲームみたいな感覚でやっている」とまで告白。慎重になりすぎず、「まずは一歩を踏み出そうよ!」と聞こえたこのメッセージは、会場全員の背中を押してくれたのではないでしょうか。
高校生の部*************************************
●「遠賀高校と地域の連携」~~~~~~福岡県立遠賀高等学校(生徒会・ボランティア同好会)
山形 悠登 さん、永島 志瑞也さん、中村 彩良さん
おんがこどもまつり、レガッタ、農業祭など、多数の地域イベントに参加してきた実績を発表してくれました。「青米パン」などオリジナル商品は、地域でも広く認知されつつある一方、遠賀川クリーンアップなど、環境保全活動にも欠かせない存在となっています。
●「スマートフォンの功罪」~~~~~~~~~~~福岡県立遠賀高等学校(観光・情報コース)
金澤 唯翔さん、竹内 大翔さん、安達 真奈美さん、大島 衣織さん
世代間で認識の隔たりがあるスマートフォンについて、意見発表を行ってくれました。依存症状や禁断症状として、身体や心の不調、コミュニケーション障害が危惧されるものの、高校生にとっては、既に人間関係構築に欠かせないツールであること。起業家であるホリエモンの言葉なども紹介して、大人への理解も求めました。
●「馬頭岳改造計画」~~~~~~~~~九州産業大学付属 九州高等学校 春野光琳さん
町内一の標高を誇る馬頭岳での、ユニークなアイデアを披露してくれました。国東や糸島で行われているイベントを参考に「芸術」「文化」「物販」をからめた内容で、遠賀町の新たな観光スポットとして生まれ変わらせようというもの。来場者にもアドバイスを求めたところ、さっそく手があがっていました。発表後には、コラボプランも出て、盛り上がったようです。
●「中高生と大人をつなぐお茶会」~~~~~~~~~~~~~神村学園 猿渡彩乃さん
「全国高校生マイプロジェクト」(認定NPO法人カタリバ主催)にも参加している猿渡さん。自分が進路に悩んだ時、相談できる大人がいなかったことから生まれた「アフタヌーンティートーク」は、すでに実践中で、大人にとっても学生にとっても、刺激的な場になっているそうです。自分としっかり向きあい、行動している姿に感心させられました。
●「ユメ」~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~九州共立大学 久保奨己さん
体育教師を目指す久保さんの「ユメ」は、甲子園に行くこと。野球を通して、学生たちを指導していくこと。学生たちのユメを導いていける人になること...。熱血漢 久保さんのストレートなプレゼンに、応援の拍手が湧きました。
●「やりたいこと」~~~~~~~~~~~~~~~~~~九州共立大学 鎌田志朗さん
いろいろな経験をし、好きなことに向かい、人と関わることを掲げて、時間の使い方を工夫しつつ、人として成長していく決意を話してくれました。多世代で楽しむ「ミニ運動会(仮称)」企画には、スポーツ学部の若者らしいアイデアが盛り込まれていました。
●「特別支援教育って?」~~~~~~~~~~~~~~~福岡教育大学 飯塚わかなさん
手話も交えながら、カンボジアでの経験なども紹介してくれた飯塚さん。特別支援教育とは、障がい者だけでなく、支援を求める幅広い人たちのためのもの。どんな人でもその人らしく、生きたいように生きて行ける、そんな社会の有り方についても言及しつつ、自分の行く道を語ってくれました。
●「食と幸せ」~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~九州女子大学 井手桃美さん
パソコン資料の不調にもめげず、海外経験なども含め、笑顔で話してくれた井手さん。管理栄養士を目指しつつ、人と人、人と食卓をつなぐ場に関わりたいとのこと。現在は話題の「注文を間違える料理店」(認知症スタッフの間違いを受け入れ、楽しむレストラン)を構想中とのこと。来場者にも協力を求めました。
起業家プレゼンテーション*****************************
丸家 梢氏 (遠賀町在住・デザイナー)
学生にとっては、地域で先を行く、先輩起業家の丸家氏。高校を退学し、服飾の専門学校に入り直したことや、無給で働いたことなど、苦労話も交えて話してくれました。起業してよかったことは、好きなことをやる楽しさがあること。その反面、責任は重く、辛くても逃れられない、ともひと言。「興味をもったことにつき進めばよい」「信念をまげずにやれば大丈夫」とのアドバイスに経験者の重みが感じられました。
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交流会では、参加者同士が打ち解けた様子で、名刺やライン交換。思いがけない縁に驚いたり、コラボレーション案が生まれたりもしていました。
また、発表者以外にも、自己紹介がてら短いスピーチをしてもらうことになり、さらに和やかな雰囲気に。
金融機関に勤めて、地方の中小企業や商店街を元気にしたい、という学生や、大量生産される安価なファストファッションの現状を変えたいと考える学生、地域の良さをもっと伝えていきたい、と話してくれる学生もいました。
若者に伴走していこう、という大人からも、若い世代に温かなエールが送られました。本物の学びをインプットするだけでなく、アウトプットしていくことの重要性を皆で共有するとともに、若者の想いをしっかり受け止め、支援する責任も再認識。この交流会が、それぞれの人生を変えるきっかけの一つになることを願いつつ、2019年にむけて決意の機会にもなったようでした。