「まちづくり・人材育成セミナー~人が人を呼ぶ、新たな仲間のまきこみ方~」(セミナー付個別相談)10/9開催
遠賀町起業支援施設PIPITでは、起業前後の課題解決支援のひとつとして、専門家による無料個別相談会を実施しています。平成30年10月9日は、地域づくりや人材育成への取組や実績で脚光を浴びる西塔 大海氏をお招きしました(「まちづくり・人材育成」セミナー同時開催)。
山深い集落に年間1,200人が訪れる
福岡県築上郡上毛町。大分県との県境に近い、人口7千人ほどの町は、他の多くの地域と同様、人口の減少と高齢化という問題に直面しています。そんな上毛町の山深い場所にある小さな集落に、若者を中心に年間1,200人が訪れるという話は、驚きと共に非常に多くの関心を集めました。
上毛町のプロジェクトに携わる人物のひとりである西塔氏は、東日本大震災を機に大学院を飛び出し、被災地の復興と雇用創出事業に従事しました。やがて上毛町に移り住むと地域おこし協力隊員となり、地域の活性化や新規事業創出サポートなど、失われつつあるつながりと地域コミュニティーを取り戻す活動を続け、すでに5年が経ちました。
100%で聴く
相談会では、起業家が切り出す実現したい想いや、抱えている課題などに対し、西塔氏は相手を遮ることなく、すぐさま助言するわけでもなく、とにかくじっくりと話に耳を傾けます。質問を次々と浴びせることも、自分の意見を主張することもありません。この傾聴する姿勢は「100%で聴く」という表現で、人と地域をつなげる上で最も大切なことだとして、この後に続くセミナーで紹介されました。
また、相談者が、経営するカフェについて、「仲間が自然と集まるような場所にしたいが、思い通りにいかない」と話したときも、西塔氏は静かに聞き入り、あれこれと指南する代わりに、実際に多くの人が集まっている場所の名前を挙げました。この言葉は、「理想とする姿が具体的にイメージできていれば、人はそこに近づいていく」ということを示唆していたのだと説明がありました。名前の挙がった場所には行ったことがない相談者に、その行動を促すアドバイスとなったでしょう。
「みらいのシカケ」
個別相談後のセミナーでは、人が人を呼ぶまちづくりや、新規事業創出の事例が紹介されました。そのひとつが、「上毛町ワーキングステイ」です。自分の仕事を持ち込み、働きながら田舎暮らしを満喫でき、そして地域の活動に関わることもできるこの移住体験プログラムは、たちまち大きな反響を呼び、実際に移住した参加者も出ました。
続いて、2014年春にオープンした「上毛町田舎暮らし研究サロン」(通称:ミラノシカ)は築100年の古民家をリノベーションした物件で、そこに常駐するスタッフが、地域の人や行政と、町を訪れる人との橋渡しをしています。こういった拠点づくりや企画を積み重ね、いよいよ、「みらいのシカケ」プロジェクトが動き出します。移住定住促進の取組や、その情報発信を通じ、専門性や技術など、地域にはない活力を持つ多くの人が、繰り返し上毛町を訪れてくれるようになりました。
人が人を呼ぶ、新たな仲間のまきこみ方
「みらいのシカケ」で生み出されたアイデアは直ちに実行に移されます。まずはやってみて、振り返って「よかったこと」を共有することを繰り返したといいます。その活動は「地域のため」を目的に取り組むのではなく、「楽しいと思うことを楽しくやる」ことがもっと大切だと西塔氏は話します。こうしてアイデアは事業化され、定着し、そこに雇用が創出されることで地域の経済が活性化されていきました。
「みらいのシカケ」に共感してくれる人たちは、やがて「友だち」となり、次に来るときにはさらに友人を一緒に連れて来てくれました。彼らはいつしか地域の人と仲良くなって「仲間」へと変わります。地域に人を呼び込み、関わりを持つ人材を増やすことで人口減少の課題に向き合う「シカケ」が、ここに形作られました。
西塔氏が実践してきたことを参加者が体感したような、起業やまちづくり・人材育成のヒントがたくさん盛り込まれたセミナーでした。