遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
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「人や地域の可能性や喜びを『音楽・アート・デザイン』で掘り起こす起業家」(第26回PIPIT交流会)(8月29日開催)

2019年 08月 30日

 今回の交流会は、筑豊地区で音楽やアート、デザインで地域に貢献するソーシャルビジネスを起したお二人にお話しいただきました。
 会場にはまちづくりや地域おこしに取り組んでいる方はもちろん、学生、医師と色々な方が集まりました。

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プレゼンテーション1******************************
株式会社BOOK 代表取締役社長 樋口 聖典 氏
「ハズレモノの起業論~社長になんてなりたくなかった~」

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 「起業したくて起業したわけではなく、他に選択肢がなかった」と言う樋口さんが、「都会や田舎、環境にとらわれず自己実現できる」、「どこでも誰とでも音楽をやっていく」、「音楽を中心に田川を盛り上げるためにやっていく」を目標にしている株式会社BOOKの立ち上げへと繋がった、人生での選択についてお話されました。
 小学校時代は、図画や作文といったゼロから何かを作り出す事が大の苦手でした。やがて、ミュージックバンド『BOØWY』の氷室京介さんに憧れ、大学ではバンドを組んで福岡市で活動を始めます。徐々に人気が出てきて全国ツアーや台湾のロックフェスなどにも出るようになりましたが、作りたい曲がなく、曲作りが嫌いで仕方ありません。しかし、曲を受注製作するクライアントワークならできました。締め切りというものがあるとなぜかできるのです。バンドでプロになるつもりで一念発起しましたが、興味がある仕事しかできず、同じ場所で寝起きして同じ場所に仕事に行くということができません。普通の人ができることが自分はできないのかと思うようになってしまいました。
 そこでバンドを捨てて単身上京し、あの吉本興業に入りコンビを組みます。お客さんに受けない状況が続く中で、今までやってきた音楽とお笑いを掛け合わせられないかを考え、やっと笑わせることが出来た時には、快感を覚えたそう。
 そんな時、弟が会社化を提案してきたので『株式会社オフィス樋口』を立ち上げます。音という領域に関すること全てが事業内容で、社員は自分だけ。演奏やナレーション、歌も歌い、CM製作もやっていました。(ちなみに、少し前に流行った『あたりまえ体操』『TOKAKUKA~都か区か』も樋口氏の作品です。)
 しかし、髄膜炎などの病気になったことで、弟子を雇って仕事をチームでやるようになりました。このような事態になって初めて『何を得るかは自分次第なんだ』愛・友情・感謝という言葉が自分のハートに入ってきました。
 こんな時に、田川の友達から「2014年に廃校となった旧猪位金小学校を利用して何かやってみないか?」という声が掛かりました。そして、「音楽を中心とするコンテンツ産業の創出・集積」を目指し、音楽制作に必要な機材が揃えてあり、レコーディング、ワーキングスペース、宿泊もできる、『いいかねPalette』を2017年4月にスタートさせました。
 同じくして立ち上げたのが、株式会社BOOKです。この会社はいろいろな所から仕事を取ってきてそれを地元のクリエーターさんに発注していくビジネスを手掛けています。

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 樋口さんは、「起業とは、社会に適合できなくても生きていく道を自分で作る事。会社員に向いていない事が大事なポイントかもしれない」と言いました。そして、「何でもできる世界、誰でもできる世界、どこでもできる世界を作って、人間の活動をもっと自由にできないかと考えてつくった『いいかねPalette』はハード面としてはいいが、ソフト面としてもっと充実させていきたい」と語られました。

プレゼンテーション2******************************
NPO法人アートもん 代表理事 﨑山 香王里 氏
「アートが動かす人・心・まち・地域!~アートが繋いだ人と人・人とまちの物語~」

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 「私アートで集客できます!」とドラマの台詞のような第一声から始まった﨑山さん。団体を立ち上げて13年目、NPO法人にして11年活動する中で「自分たちのできる事、やりたいことに人が集まってくれることほど楽しいことはない」と考えています。

 美術を専門的に学んだこともない普通の専業主婦だった﨑山さんの転機は、古賀市に住んでいた時にカルチャー教室学んだトールペイントを、主婦の人たちに教える教室を展開するようになったこと。そして子育てが一段落してから、古賀市のクラフト作家、雑貨店を経営者、絵画教室をしている人達とアートもんを立ち上げました。ボランティアで工作教室をやったり、イベント出展で活動資金を得たりと、活動が面白くなってきた矢先、添田町へ引っ越すこととなります。当初は添田町に魅力を見いだせず、古賀市通いをしていましたが、メンバーが色々な事で少なくなり、今後住み続けるであろう添田町で心機一転やっていこうと考えました。

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 アートもんの事業は、独自のキットを活用した工作の出前講座、アートの手作り・まちづくりに関わるイベント企画運営、プロの芸術家を招聘して行う芸術文化の教室運営の3つです。
 出前講座の中でも、小倉駅前で開催される『親子で手づくりフェア』には、主催の手芸メーカーから「アートもんは集客が出来る」ということで出展に招かれ、2日間で2,000人が集まるイベントになっています。こんなに集客ができるようになったのは、子どもはもちろん、保護者が喜んでくれる工作キットにして、さらに人と人との繋がりを作れたから。
 繋がりが最大限に発揮されているのが、アートの手作り・まちづくりに関わるイベント企画運営です。添田町では、古賀市の時と同じ集客方法では集客できませんでした。そこで、町内で開催されるセミナーや委員会、婦人会などにどんどん参加し、発表する機会があればお話をさせていただくうちに、地域の皆さんが協力してくれるようになりました。プログラムを作る時は、参加者の目線で、自分がワクワクする内容や工夫を凝らした仕掛けをイベントに盛り込んでいます。例えば、『添田星空フェスタ』では、プラネタリウムを見た後に実際の星空を観察、ワークショップ会場では天体望遠鏡づくりや星のアクセサリーづくりのコーナー、星占いのコーナーや、インスタ映えするようなコーナーを設けました。そして、その内容を全部詰め込んだフライヤーを作り、とにかく配る。ポスターを色々な所に掲載してもらう。SNS、HPはもちろん回覧板から、町内報、掲載できるところは何でも掲載してもらう。いろいろな所で目にすれば、「面白そうだから行ってみるか」という気持ちに繋がるので、「動いた分が数字として返ってきます。足で稼ぐことが大事」と語る﨑山さん。出来あがった作品を見て喜ぶ子供たちの顔を見るのがすごく好きで、子どもたちがイベントで楽しそうにしている顔をみると、「やったー、よっしゃ―」という気持ちになるそうです。

トークセッション******************************

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 登壇者お二人によるトークセッションでは、「『いいかねPalette』のソフト面の充実のために、今日は出会うべき人に出会ったという感じです」と樋口さんが﨑山さんにエールをおくると﨑山さんも「それぞれの良いところを協力し合って面白いものを作れたらいいですね」と話されました。

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 その後の会場全員での交流会では、『起業』で得られる『幸せ』について、時間がもっと欲しいくらいに盛り上がりました。

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