遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
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「地域おこし起業家の事業展開2022~福岡よかとこビジネスプランコンテスト受賞者に聞く~」第42回PIPIT交流会(3月10日開催)

2022年 03月 23日

 今回の交流会は「地域おこし起業家の事業展開2022」をテーマに、福岡よかとこビジネスプランコンテストの受賞者3名の方に発表いただきました。

 新型コロナウイルス感染予防対策のもとPIPIT会場に発表者と参加者が来館され、またオンラインでも発表者と多くの方々にご参加をいただきました。

◆起業家プレゼンテーション(18:35~20:05)

①「GALAXY!!『久留米絣×旅』で久留米から世界へ!あらゆる境界をこえてゆけ!」

 小倉 知子 氏(IKI LUCA 代表)

(福岡よかとこビジネスプランコンテスト2021 地域活性化賞受賞)

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 小倉氏は旅が大好きで、これまで50ヵ国以上旅をしてきました。そして「大好きなことで起業したい」と2021年5月、「旅」をコンセプトとして久留米絣のオリジナルブランド『IKI LUCA』を立ち上げられました。

 久留米絣は、220年以上の歴史がある伝統的な織物ですが、地味なイメージのため海外では誰にも知られていません。地元であり大好きな「久留米」と、やはり大好きな「旅」を掛け合わせることにより、「旅する絣」という新しいイメージをつくり出したいという思いで、ブランドの立ち上げに挑戦しました。絣を全く知らない人でも、自分のワードローブに取り入れてみたいと思ってもらえるよう、生地やデザインを選んでいます。

 久留米絣には、「かさばらず持ち運びしやすい」「静電気が少なく着心地がいい」などの特徴があり、旅にぴったりなアイテムです。それは全30にも及ぶ工程を専門の職人による分業制で、平均3カ月かけてつくり上げるからこそできる品質の良さによるものです。『IKI LUCA』は、アンテナが高く、旅や丁寧な暮らしを好む都市部の人をターゲットにしています。

 ビジネスとしての目標は「3年で年間売上1億円」です。約5千人の新規顧客を獲得すれば達成できるのですが、それだけの人に『IKI LUCA』を通して久留米絣に出会ってもらい、その産地の久留米に出会ってほしいとの大切な想いがあるそうです。
 また、この目標には「産地が元気になってほしい」、「久留米絣の関係世界『GALAXY』(小倉氏による呼称)を拡大して久留米への波及効果を生み出したい」との想いも込められています。

 『IKI LUCA』の販売戦略としては、やはり「旅」を起点として考えています。つまりターミナル(駅や空港)、旅の滞在地の宿やショップなど、「旅のワクワク感」を想起させる場所での展示や販売を行っています。
『IKI LUCA』の商品を手に取ってくれた人たちの物語を発信してもらうことにより、その世界観をつくっていき、世界に羽ばたくブランドに育てていきたいと考えています。

 「意志ある行動からすべて始まる!」。意思があれば、アドバイスしてくれる人たちも現れるそうです。「アイデアがあるのならば、すぐ行動に移すことが重要です」と、熱く語られました。

②「宅配洗濯×見守りサービス ピンポンウォッシュ~地域課題解決から始める社会課題解決~」

 吉田 翔平 氏(株式会社ピンポンウォッシュ 代表取締役)

(福岡よかとこビジネスプランコンテスト2021 ビジネスモデル賞受賞)

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 訪問介護事業を基盤に宅配洗濯と見守りサービスを合わせた『ピンポンウォッシュ』というサービスを始めている吉田氏ですが、元は役場に勤務する職員でした。

 役場時代に地域課題として感じていたことを解決するために、自分の事業として『ピンポンウォッシュ』を始めました。

 その課題とは、高齢者のみの世帯や高齢者の一人暮らしが増え続けていることや、また民生委員など地域の見守り手が不足していることでした。そのために孤独死も増加して、大きな社会課題となっています。
 また「洗濯」の価値観やスタイルの変化としてコインランドリーが増え、家では洗濯をしない若者も多くなり、家では洗濯ができない高齢者も増えてきました。

 そこで、「高齢者世帯の見守り」と「家庭内の洗濯」を両方解決するサービスを始めました。その特徴は2つあり、1つ目は、できるだけわかりやすいサービスにすること。洗濯は渡しているネットに詰め放題で引き受けることにし、地区別に曜日と時間を決める「定時巡回方式」をとっています。2つ目は、介護福祉士などの有資格者が高齢者世帯を回り、健康状態や困りごとを聞き取ることです。認知症の初期症状や脳梗塞の兆候などにも気づくことができ、遠くに住む家族にも安心してもらえます。

 ビジネスとして工夫した点では、月額制にしたことによる安定的な収益、車両購入だけで始められる初期費用の安さ、スプレッドシートの活用によるリアルタイムでの情報更新などです。

 2021年6月からテストマーケティングを始めましたが、高齢者自身ではなく、都市部に住むその家族がターゲットとなっています。対象エリアを絞ってピンポイントで広告できるSNS広告やプレスリリースを活用し、ソーシャルビジネスであることで、新聞記事などにも取り上げてもらいやすいそうです。

 目標は、福岡県すべての地域での事業展開であり、訪問介護との相性の良さから、ビジネスモデルのパッケージ化やフランチャイズ化なども視野に入れているそうです。

③「『いつでも学べる!聞ける!医療機器の使い方動画教育サービス』医療機器のわからないを解決する『キキサポ』」

 大石 杏衣 氏(株式会社Kiwi 代表)

(福岡よかとこビジネスプランコンテスト2021 大賞受賞)

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 大石氏は「臨床工学技士」という医療機器取扱を専門とする職業を、フリーランスで務めています。『キキサポ』は、その経験の中での課題解決のために開発しているサービスで、医療機器の使い方を調べたり、ユーザー間での情報共有などをスマートフォンで見ることができるサービスです。気軽に調べることができ、臨床に基づいた使い方がわかり、医療機関の研修にも活用できることが特徴です。

 病院には医療機器がたくさんあり、医療機器がなければ診断も治療もできません。しかし、機器の取扱いでのミスや事故も多く、人的要因が多いと言われています。
 繰り返されるミスや事故を、どうすれば減らせるのか悩んでいた大石氏が目標としたものは、医療機器の専門家に「いつでも、どこでも、学べる、聞ける」サービスです。
 患者さんの安全と医療従事者の安心につなげることが目的ですが、現場の声を機器メーカーにフィードバックできるようにもしていきたいと考えているそうです。

 『キキサポ』の強みは、開発者である大石氏が、さまざまな病院に出向いた臨床工学技士であること、臨床の立場から医療安全の視点でコンテンツ作成できること、中立的な立場でメーカー横断的に掲載できることです。今年5月にはα版、10月にはβ版をリリースする計画ですが、ビジネスとしてはマネタイズしにくい業界でもあり、まだまだ試行錯誤が続いています。

 解決すべき課題、なぜ自分がやるのか、なぜ今やるのか、というものは全て明確だったのですが、一時は「漕ぎ始める動力」がわからずに、なかなか進みませんでした。今はサービス開発の仲間も見つかり、福岡よかとこビジネスプランコンテストで受賞したこともあって急激に事業が進み始めています。

 今後も患者さんと医療機器をつなぐ行為はなくならないため、ミスが発生する危険性はなくなりません。また、医療行為が病院だけでなく地域や家庭にも入ってくることで、正しい知識を共有する必要性はますます高まります。『キキサポ』が、福岡から全国へ展開していくことを願っていると締めくくられました。

◆意見交換・質疑応答

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 意見交換では発表者に対して、つくり手と出会うストーリーや別のサービスへの展開の可能性、コロナ禍での準備状況等、様々な質問や意見が出されました。

 参加者からは「多くのビジネスチャンスがあるのだと改めて感じました」「起業への課題の共有が参考になりました」等の感想をいただきました。

 ご登壇いただきました発表者の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。