遠賀町起業家フォーラム「起業家が仕掛ける、SDGs時代の持続可能な地域づくり」2/16開催
遠賀町起業家フォーラム「起業家が仕掛ける、SDGs時代の持続可能な地域づくり」に参加するため、70名を超える方々がPIPITに集まりました。
このフォーラムでは、農家が作る再生可能エネルギーの普及に取り組む女性起業家、家族や地域を軸とした身近なコミュニティーの拠点づくりを仕掛ける起業家など、地域の資源を活かしながら、同時に新しい価値を創造し続ける新進の起業家たちを九州各地からお迎えしました。
「まちびとが見立てる。まちの暮らし。」
おきな まさひと氏 まちびと会社visionAreal 共同代表、福岡県久留米市
おきな氏は、福岡県久留米市を拠点として活動し、イベント企画・運営、リノベーションなど数多く地域プロジェクト・まちづくりをコーディネートしています。この日の講義は、久留米市での事例紹介などを通じて、参加者それぞれが「豊かな暮らし」を作ることについて考える機会を提供するものでした。
おきな氏は、自分から仕掛けたり、周りを巻き込んだりというスタイルではなく、自らは黒子に徹するそうです。「いい出来事には必ず主人公がいる。」と、自主的にまちづくりに関わる人たちを主役にすることを心がけていると言います。
地域にはそれぞれの資源があると言うおきな氏は、「自分サイズとタイミング」で関わり、共感の連鎖で⼈と⼈がつながっていくことの⼤切さを会場に提言しました。参加者は、目の前の暮らしを少しずつ豊かにしていくことを意識しながら、これからの活動に取り組んでいくことでしょう。
「アートを活かした町の賑わいづくり」
冨永 ボンド氏 ボンドグラフィックス 代表、佐賀県多久市
冨永氏は、「つなぐ(接着する)」を創作テーマに、木工用ボンドを使った独自の色彩と画法で、独創的な抽象・半抽象的な絵画を描くアーティストです。創作拠点となっているアトリエ「Art studio ボンドバ」を拠点にして、アートを用いた町おこしプロジェクトを実践しています。
多久市ウォールアートプロジェクトは、シャッターが閉まったままで老朽化が目立っていた商店街に、大きなウォールアート(壁画・シャッターアート)をつくることで、にぎわいを生み出そうという取り組みでした。当初は反対する家主が多かったそうですが、描き続けるうちに次々と賛同者が名乗りを上げ、今や「アートのまち、多久」の中心として、多くの人が集まりにぎわう場所になりました。
「自由なアート創作には、失敗がない。」という冨永氏の活動は、若い世代を中心に、多くの人を惹きつけてやまないようです。
「いろんな土地・事業で起業する」
菊池 勇太 氏 合同会社ポルト 代表、北九州市門司区・大分県九重町
菊池氏は、福岡市と九重町を中心に多拠点で幅広く活動しています。マーケティング、イベント関連事業などに加え、今度は生まれ育った門司港で、ゲストハウス営業やイベントの企画運営などを手掛ける「PORTO(ポルト)」をスタートさせました。
さまざまな縁でいくつもの事業を立ち上げてきたという菊池氏は、「点がつながり、やがて面になる。」など、多拠点で活動するメリットをいくつか挙げました。「無駄に思えることも、いつかプラスになると、合理的な選択は否定する。」と言う菊池氏は、相手を信じ、自分を信じているとも話します。
あえて多拠点で活動することを選択し続ける菊池氏は、起業は「思っていたよりも簡単だった。」と、さらりと言いました。その言葉を、起業を考える参加者はどんな思いで受け取ったのでしょうか。
「子育てしてたら、いつの間にか地域おこししてました」
豊福 未紗氏 フィッシャーマンキッチン 代表、福岡県宗像市
豊福氏は、世界遺産「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」で知られる宗像市大島で、「漁師サンド」が自慢のフィッシャーマンキッチンを営んでいます。
仕事を始めた当初は、不安ばかりが先に来たと言います。失敗を恐れ、批判を恐れ、協力者もいないと感じていました。ですが、実際にやってみると、サポートを申し出てくれる人もたくさんいたそうです。今は、島在住の同世代の友人と一緒に「しまカフェ」というグループを立ち上げ、イベント企画や特産品開発など、島の魅力を発信する活動をしています。
この日のフロアには、豊福氏の応援に駆け付けた人の姿が、たくさん見られました。周りの人から慕われる魅力を持つこの起業家は、事業の拡張よりも普段の暮らしを大切にしているといいます。起業の原点を忘れることなく、子育てと仕事の両方を目一杯にやりたいと、母として人として成長するために挑戦を続けています。
「想いを形に、私はこうしてスタートしました」
藤井 真美氏 カフェ スマイル コラット 代表、北九州市八幡西区
藤井氏は、1年前に古民家風カフェをオープンしました。薬膳キーマカレーとグルテンフリーのスイーツが、お店の看板メニューです。
飲食店の経営は、近隣に競合店が進出してきたり、天気の悪い日は客足が遠のくなど、外的要因に影響を受けやすく、一人で切り盛りする難しさを感じていると言います。そんな時に役に立ったのが、他業種で得た幅広いビジネス経験でした。
店舗があるのは、学生時代を過ごした町、北九州市八幡西区の折尾です。しかし、そこは駅周辺再開発の区画整理の対象となっており、2~3年内には移転を余儀なくされる可能性が高いことがわかっていました。「なくなってしまうかもしれない場所だからこそ、その前に多くの人に知ってもらいたい。」と、つながりを意識し、地域に根づいたカフェ経営を続ける藤井氏の姿は、地域づくりで起業を考える参加者をきっと勇気づけたことでしょう。
「『農家の嫁』が切り開く未来 活動から起業への大きな一歩と被災後の葛藤」
ERI氏 一般社団法人GIAHSライフ阿蘇 理事、熊本県南阿蘇村
ERI(大津 愛梨)氏は、熊本県南阿蘇村で有機米を生産し、同時に、農村の資源を使った再生可能エネルギーの事業化と普及活動に取り組んでいます。阿蘇地域を世界農業遺産認定に導いた立役者のひとりで、2017年には、アジア太平洋地域の農業発展に貢献した人を顕彰する国連食糧農業機関(FAO)の「模範農業者賞」に選ばれています。
「先ず隗より始めよ」と、まず、自ら行動することの大切さを説くERI氏は、「エネルギー兼業農家」を目指して動き始めます。しかし、今日までの歩みは順調だったとは言えません。農家、そしてNPOが取り組む事業に対する、心理面・資金面・広報面など幾重もの壁が行く手に立ちはだかり、さらに熊本地震が追い打ちをかけました。
そんなピンチもチャンスと捉える発想と、「あきらめない」気持ちで、自分たちの手で農家の未来像を切り開こうという姿には、参加者からの多くの共感の声が寄せられました。こんな場所で子育てをしたいと移り住んだ南阿蘇で、起業家として、母として行動を続けます。
交流会で新しいつながりが生まれる
ランチタイムと講演終了後のティータイムの2回、意見交換・情報交換していただく交流会を実施しました。遠賀町の食材などを使った料理やドリンクを味わいながら、登壇した起業家と参加者との会話は大いに盛り上がり、新しいつながりがたくさん生まれました。この場で出会った人とのつながりが、この先ますます広がって行くことを願っています。
起業家精神を肌で感じる貴重な機会
現在、活躍中の起業家の話を聴いて知見を得て、交流会で直に触れ合うことで起業家精神を学んだことだと思います。この経験から新たな発想やアイデアが引き出されたり、自分自身のスキルや専門性を再認識したりといった方も多くいたことでしょう。
参加した方々にとって、この起業家フォーラムが、起業家精神を肌で体験でき、起業に取り組むきっかけとなったことでしょう。