遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
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「アイデアから育てた自分のビジネス」第44回PIPIT交流会(7月26日開催)

2022年 08月 03日

 今回の交流会は「アイデアから育てたビジネス」をテーマに、3名の起業家にご登壇いただきました。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため完全オンラインにて開催しましたが、今回も多くの方々にご参加いただきました。

◆起業家プレゼンテーション(18:35~20:05)

〇プレゼンテーション1

『古民家をシェア型書店に改装、地域交流の場へ』〜空想を現実にする、アイデアの育て方〜

 大西 貴也 氏 (ぼくの書店 代表)

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 大西氏は北九州市黒崎で、元々祖父母が住んでいた古民家をリノベーションして、シェア型書店「ぼくの書店」を始められました。

 小学校の頃から空想が好きで、「空想上のまち」をつくっていたそうですが、専門学校を卒業し社会人を経験した後、やりたかったことを始めています。

 大西氏が考えるアイデアのつくり方は、「話題性があるか」「共感・賛同してくれる人がいるか」「ストーリー性があるか」の3つにあてはめていくことで、「ぼくの書店」でも「賛同してくれる人がいるか」が課題でした。そこでクラウドファンディングを実施したところ、75人が支援してくれたので、「75名以上は賛同してくれている」と判断して開業しました。

 黒崎では駅前の商業ビル閉鎖に伴い大型書店が2020年に閉店しましたが、実は最近は住む人も増え、商店街も新規創業店が増えています。そこで「明るい話題を増やしたい」と思い、書店を始めました。最初は「ぼくのコーヒー」を始めようと考えていましたが、「糸島の顔がみえる本屋さん」を始めた中村真紀さんの話を聞く機会があり、黒崎で書店を出店する意欲が増したそうです。

 2022年4月3日に、18の本棚オーナーで書店をオープンしましたが、初日の来店は6人でした。大西氏は、「何もなかった場所に1人でも来てくれたことがすごい」と喜びました。現在は26の本棚オーナーがいて、徐々に商品と本棚が増えていくことを楽しんでいます。

 シェア型書店の活用方法は十人十色、小さな書店がたくさんあるイメージになっています。シェア型書店のいいところは、「自分の作品が発表できる」「イベントの企画や運営に携われる」「棚主がいる限り永遠に閉店しない」の3つだそうです。

 今後は、シェア型書店「ぼくの書店」を北九州の各地域に増やす、農作物をみんなで育てる畑「ぼくのファーム」など、「ぼくの」シリーズを増やしていく計画で、既に2023年春には「ぼくのコーヒー」のオープンが決まっています。現在、「ぼくの書店」での滞在時間は5分から10分と短いため、もっとゆっくりしてもらい、地域交流の場にしたいと願っています。

〇プレゼンテーション2

『0から始めるビジネス』~自分はこうやって仕事の幅を広げています~

 宮田 誠 氏 (株式会社 MakerS 代表取締役)

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 宮田氏は大学を卒業した約2年前、株式会社MakerSを創業して動画制作を始められました。大学時代から起業したいと思い、様々なコミュニティに加わり、海外へ行ってみるなど、卒業後にどうやって生きていきたいかを自分に対して考える大学生活を送っていました。いろいろなイベントを開催したりしながら、自分として一番しっくりいくものを仕事にしたいと思い、出会ったものが動画制作だったそうです。

 宮田氏は宮崎県の出身で、宮崎には観光資源がたくさんあること、しかしPRできていなく魅力が周囲に広がっていないことを感じるようになり、宮崎の観光事業に貢献したいと思っていました。動画を制作することで少しずつ人脈を広げていき、北九州と宮崎の懸け橋となることを願っています。

 株式会社MakerSは、法人向けの「動画撮影、制作事業」、同窓会や記念式典などの「Live配信事業」、動画とホームページをまとめてつくるための「補助金申請サポート事業」を行っています。仕事の依頼を受けるまでは、最初は大変でしたが、PIPIT交流会や様々なイベントなど、身近な人脈からお客様に出会うことを進めました。また同時に、作品をつくりながら自分の「テイスト」や「強み」を表現しました。

 お客様に出会うための一番の軸は「クチコミマーケティング」です。そのためには、レスポンスや気配りなど、社会人として当たり前のことを当たり前にすることが大事で、宮田氏はそこをしっかり固めながら人脈を広げています。

 また、お客様に合ったものにアンテナを張り、自分の持っているものは何でも提供しているそうです。仕事がきっかけで縁がつながっていくこと、人生の中でどれだけ、かけがえのない出会いを築いていけるかを宮田氏は大事にしています。

 宮田氏が続けていることに、多種多様な経営者とのZoom会議があります。毎週開催され、お互いがお客様の紹介をしているそうです。起業しようという人にとって活用できるので、ぜひ自分に連絡してほしいとのことです。自分のプレゼンが起業のステップにつながればと締めくくられました。

〇プレゼンテーション3

『素材の次の価値を考える』~廃材のセレクトショップ マテリアルマーケットの取り組み~

 久保 哲也 氏 (マテリアルマーケット 代表)

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 久保氏は家具や雑貨などのブランディング、商品企画、デザインを事業とする「KUBO DESIGN STUDIO」を経営しながら、廃材のセレクトショップ「マテリアルマーケット」と、人と街をつなぐ「軒先リヤカー研究所」という3つの事業を運営されています。

 初めは「もったいない」から始まった端材の活用だったそうですが、端材を素材として完成させるアイデアを持っている人が多いことから、買った人が完成させる、「余白のある商品」を作ることで商品への愛着も生まれ、長く使うことにつながることに気がつきました。そこで、可能性をお客様が広げる「マテリアルマーケット」を始めたそうです。

 久保氏はデザイナーとして独立した頃に東京から福岡へ戻り、ネットワークを広げようと「イノベーションスタジオ福岡」というプロジェクトに参加しました。その中でフィールドワークやリサーチ等を行うことにより、ぼんやりしていた「マテリアルマーケット」が具体的になりました。プロジェクトで出会った5人で活動をスタートさせ、最初の2年間は福岡県の内外で多くのイベントに出店し、テストマーケティングを重ねました。同時に住宅建築でのDIY、子どもの遊具づくり、モニュメントづくりなど素材としての可能性を試しました。

 マーケティングを踏まえ福岡市西区に実店舗をオープンさせると、これまでなかった業態ということでメディアが注目して取材し、マテリアルマーケットの存在を広めてくれました。見たり触ったりという、Webでは完結できない、使い方を相談できる場として不可欠になっています。

 よく「マテリアルマーケットって儲かるの?」と聞かれると言います。メーカーや工場にお金を払って素材を仕入れ、次に必要としている人へつなげる取組みですが、これ自体は継続するビジネスとしては難しいそうです。しかし、イベント企画や完成品の企画など、これまでとは異なる依頼が来るようになりました。デザイン事務所や軒先リヤカー研究所との相乗効果によって、新しい事業やお客様獲得につながっているそうです。

 最近考えていることは、「あたりまえ」を「あたりまえ」に考え直すということ。思い巡らすだけでもいろんなことに気づくもので、商品として、顧客に対して、価値のあるものになっているか考え直すことに、ビジネスのヒントが隠れていると思うと締めくくられました。

◆意見交換・質疑応答

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 意見交換では登壇者に対して、今後長期的にどういう事業を考えているのか、仲間づくりのために普段から声掛けしているのか、社会課題をどうやって見出しているのか等、様々な質問や意見が出されました。

 参加者からは「若い方たちが起業して地域の活性化の担い手になっていることを、喜ばしく聞かせていただきました」「ビジネスの始まりは小さなものだが、走っていくなかで大きくなっていくことを学びました」等の感想をいただきました。

 ご登壇いただきました講師の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。