遠賀町起業家フォーラム「コロナ禍でも果敢に挑戦する起業家たち2021」(2月20日開催)
第5回目の開催となる今回の遠賀町起業家フォーラムでは、多種多様な分野の起業家6名をお迎えして「コロナ禍でも果敢に挑戦する起業家たち2021」をテーマにお話して頂きました。
緊急事態宣言を受け、フルオンラインでの開催となりましたが、県外からの参加者もあり、主催者から起業に向けたヒントを得て頂きたいとの挨拶でスタートしました。
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三宅 静恵氏(合同会社 三宅牧場まきば 代表)
「農家だからできたこと」
博多和牛肥育牧場と水稲で専業農家を営む三宅家の長女である三宅氏は、「自家産のお米の美味しさを周りの方に教えてもらった」ことをきっかけに、第2子が産まれた時に自家産のお米を加工する「農産加工所まきば」を設立しました。
地元の直売所での販売を始め、第3子誕生の2007年に法人化し、雇用面では地元の子育て女性が働きやすい環境を整えていきます。その取り組みが認められ、2013年男女共同参画優良活動表彰にて農林水産大臣賞を受賞されました。
三宅氏は「信頼して買い続けてもらえる商品づくり」「お客様の要望を受けられる小回りの利く経営」を目指しているそうです。
現在は直売所の他、自社直売所やネット販売、買い物困難者向けにSNSで注文を受けるデリバリーにもチャレンジ中です。
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白水 高広氏(株式会社 うなぎの寝床 代表取締役)
「地域文化商社としての役割と仕組み」
「孤高の建築家」を目指した白水氏は東南アジア歴訪を経て、建築だけではなくデザイン、リノベーション、あるものをうまく使うという考えが生まれたそうです。
地域の農商工の皆さんと仕事をしていく中で、福岡県八女市を中心に2012年7月「九州ちくごのアンテナショップ」をスタートされました。
「良いものは紹介する」「良いが時代に適合していないものは作り変える」をコンセプトに地域が回っていく商流を作るため、地域文化と商社を一体的に行う「地域文化商社」として年々メーカーやEC、ツーリズムなど幅広く活動を広げてきました。
今後は他地域における店舗展開のフォーマットを作られるなど白水氏の取り組みはさらに進んでいきそうです。
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山出 淳也氏 (NPO 法人 BEPPU PROJECT 代表理事/アーティスト)
「アートを地域経営のOSに BEPPU PROJECTの活動について」
アーティストとして海外で活動していた山出氏は、大分県別府市の方々の活動に心が動かされて帰国し、BEPPU PROJECTを立ち上げられたそうです。
大型温泉観光地・別府市を活動拠点に、教育機関にアーティストを派遣する事業、大きなアートイベント、アーティストが別府に住んでいく仕組みづくり、福祉施設訪問活動や大分県ブランド創造事業「Oita Made」等、アートの創造力による地域再生を手掛けています。
これまで1,000を超えるプロジェクト、創造的事業を行うことで魅力の発信を行い、そこに集う創造的人材を受け入れる政策、創造的人材による産業の創出に取り組んでこられました。
別府市は3回の大きなアートイベントを通じて、情報発信の面では都市ブランド力が向上していき、客層が中高年男性から若年層女性へ、宿泊日数も増加していきました。そして、関係人口の増加、移住者の増加、教育福祉施設へのアウトリーチ、企業とのマッチング等、経済振興に繋がっています。
BEPPU PROJECTは地域がより豊かになっていく、多様な価値が生まれて来る場所を作る取り組みを進めていくそうです。
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溝口 隼平氏(ラフティング会社 Reborn 代表)
「川遊びを支えている仕事 豊かさの再発見を事業化する難しさと面白さ」
川遊びが好きな溝口氏は「一番良いところで遊びたい」と熊本県八代市の坂本町に移住し、川の魅力を伝えるラフティングガイドや川全般の地域事業を行うため、会社「Reborn」を起業されました。午前中に家屋の清掃・改修、午後は川遊びといった企画で皆さんが集う場所として運営されていました。
運営を通じて地域の課題(高齢化・人口減少、経済活動が少ない、空き家が多い、事業体が少ない)と向き合いながら、ラフティングガイド等観光業と林業に携わりながら地域のプロモーションを行う会社に成長していた中、令和2年7月豪雨で溝口氏の自宅と職場が被災しました。
この令和2年7月豪雨は過去最大の水害で、自宅には1mの泥が堆積し、基盤も何もかも無くなる被害が出ました。しかし、そこから現場作業をしてきた経験から災害復興事業で寄付金を募って、地域を綺麗にする活動を4か月続けます。
地域の生態系サービスを再生しながら事業化していくというRebornの原点に立ち戻り、既存の業務建て直しと並行して、災害復旧活動、過疎地の担い手を増やす仕組みづくり「山と川と地域を面白豊かにする」を仕事化出来ないかを模索しながら進めています。
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原田 啓之氏(医療法人 清明会 PICFA 施設長)
「障がい者施設が地域のお荷物ではなく、地域の資産となるために~アートや創作活動を仕事にする~」
兄に知的障がいがある環境で育ち、幼少期から様々なボランティア活動を行っていた原田氏は、高校生の時にソフトテニスで日本一になり、テニスで進学しようと考えました。その際、兄のことが引っ掛かり、いろんな人が活動できる場をつくりたい、福祉を楽しくしたいと思うようになったそうです。
大学を卒業し、障がい者施設はなぜ稼がないのだろうという疑問からアートを仕事に出来ないかと考え、日本初となる「病院内にある障がい者施設PICFA」を立ち上げ、現在は、施設長として勤務されています。PICFAは障がい者の就労移行支援事業B型を行う施設に当たります。
PICFA利用者の「主導」で進めるため、自己決定出来るように、また、多様な方と関われることからアートを仕事にしています。仕事内容は絵画、デザイン、立体物、壁画、ワークショップ、ライブペインティング、オリジナルグッズの販売等です。
現在はキャナルシティ博多、官公庁の名刺デザイン、ポスター・ラベルのデザイン、ブランディング、地元である基山町とのつながりができるよう基山駅にギャラリーをつくるなどの取り組みを進めています。
PICFAが進める社会福祉の新たな地域資産化を通じて、病院や福祉施設が遊びに来られる場所、そして、様々なコミュニティが広がる場になりつつあるそうです。
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赤尾 誠二氏(株式会社 都農ワイン 取締役工場長)
「チャレンジを忘れないワインづくり いいぶどうがいいワインをつくる」
都農ワインは、九州で一番の生産量を誇るワイナリーです。国産ぶどうを100%使用して国内で製造されたワインを「日本ワイン」と呼び、都農ワインでは、雨の多い条件不利地である宮崎でのワイン用ぶどう栽培に土づくりから取り組み、台風や雨にも負けないぶどうづくりにチャレンジされています。
以前は、果実酒製造免許を得るには大変な時間と労力が掛かりました。しかし、町役場の職員であった河野啓也氏を中心に「町にワイナリーができると町が変わる」という信念の元、農家や行政、税務署、国税局との調整を重ねてワイナリー建設事業を形にされました。
赤尾氏は都農ワインの立上げに参加し、その後、工場長に就任されました。「世界の都農ワイン」を目指し、醸造コンセプトは「地元産ぶどう100%へのこだわり」です。30年前は海外からぶどうを輸入してワインをつくることが出来ましたが、このこだわりは譲らなかったそうです。
現在、世界のワイン業界から都農ワインの取り組みは賞賛を得ています。
「ワインは地酒であるべきだ」という信念のもと、地元産ぶどうを100%使い、地元の風土を表現するワイン造りをされています。
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6名の講師のプレゼンテーション終了後に、意見交換・情報交換して頂く「交流会・まとめ」を実施しました。
講師の方へ聞き逃した質問や講師同士の意見交換も行われ、新しいつながりが生まれていました。
この起業家フォーラムは参加した方々にとって、活躍中の起業家から直接お話が聞けることは刺激になったようです。フルオンラインでの開催となりましたが、幅広い方と交流ができ、挑戦する起業家の思考や精神に触れることで、起業に取組むきっかけとなったことでしょう。