遠賀町起業支援ワークショップ「人の心が動くビジネスアイデアを生み出そう!」11/23開催
株式会社博報堂でマーケティングディレクターとしてご活躍中の伊賀聡氏(遠賀郡岡垣町出身)を講師としてお招きし、起業支援ワークショップを開催しました。起業を志す方はもちろん、副業を始めた方や、自営業の方、またセカンドライフを充実させるために勉強中の方など、目的意識の高い参加者がPIPITに集まり、伊賀氏の講義に熱心に耳を傾け、頭を寄せ合い、知恵を絞りました。
講義とワークショップの2部構成
起業家や専門家の講演で知識を聴いて学ぶインプット型のイベントは、参加しやすい利点がある反面、「すばらしい」と感心した時点で、思考や行動がストップしていることも少なくありません。この日のプログラムは、講義(インプット)とワークショップ(アウトプット)の2部構成です。
前半の講義で「生活者の潜在願望洞察(消費者が無意識のうちに求めている商品や機能、サービスなどを見抜くこと)」の重要性やその手法について学び、後半は遠賀町の地域資源である「稲作・米」をテーマに、インタビュー(聴き取り)などで生活者の「潜在願望(インサイト)」を洗い出し、ビジネスアイデアを開発する「インサイトワーク体感ワークショップ」を行いました。
インサイトを見つける
生活者が、自分でも気づかない潜在願望のことを「インサイト」と呼びます。「ホットボタン」とも形容されるこのインサイトを見つけることが、既存の商品・サービスでは満たされていないターゲットの心を動かすことに直結すると言われ、イノベーションを起こすようなアイデアの開発には不可欠な要素です。しかし、本人ですら自覚できない、意識の水面下に隠れているボタンを、一体どうやって見つけ出せばよいのでしょうか。
講義が進むにつれ、その手がかりが少しずつ明らかになっていきます。例えば、時代のキーワードやトレンドから「兆し」をつかむことがそのひとつです。あるいは、リアルな意見が飛び出す「場づくり」をして、生活者の行動を観察したり、思いもよらない「問い」でインタビューしたりといった、創造的な手法を用いて潜在願望を洞察してみることが、インサイトの発見につながるきっかけとなるようです。
遠賀の「米」をテーマにインサイトを体感
後半のワークショップでは、遠賀の米粉を使っている地元の料理店「糀(こめのはな)」のオーナー金田淳二氏による、ビジネスモデルの紹介がありました。郷土の資源が持つ魅力を参加者が再発見したところで、いよいよ遠賀産のお米で商品開発に取りかかります。
インタビューセッションの開始と同時に、参加者は生活者目線を意識しながら、それぞれの体験をたっぷりと語り合いました。それが終わると各グループでターゲットを選定し、続いてインサイトを見つける作業を実行していきます。ここからのグループワークでは、初対面のメンバー同士でビジネスのアイデアをゼロから開発しなければなりません。果たしてうまくいくのだろうかという心配をよそに、「それわかる!」といった歓声が会場のあちらこちらから上がり、活発な議論が交わされました。
お米の魅力について掘り下げていくグループ、主婦・主夫目線でメニューを考え始めるグループ、機能性を追求した商品の開発を進めるグループ、そして、健康志向に着目するグループが、それぞれのプランを形作っていきました。各グループには話し合う時間がたっぷりと与えられ、それを伊賀氏がタイミングよく区切ってセッションを進めていきます。
人の心が動くビジネスアイデア
最後に行われた発表では、クリエイティブな商品を開発したグループや、体験型パッケージを考案したグループなど、短時間でまとめたとは思えない、人の心を動かす多彩なビジネスアイデアが披露されました。ある参加者が口にした、「忘れかけていた『お米の良さ』にあらためて気づいた。これを次の世代へつなげたい。」という感想には、オブザーバーとして見守っていた金田氏も大きく頷いていました。
ワークショップでアウトプットを経験したことで、参加者の反応は、前半とは明らかに違って見えました。ぼんやりとつかみ切れていなかった「インサイト」への理解が、格段に深まっていることを実感していたに違いありません。長時間のセッションだったにもかかわらず、どの参加者の顔もやり遂げた充実感に満ちあふれているように見えました。
前半で学んだインサイトの見つけ方のひとつ、「誰もが思いつくアイデアよりも、たった一人の非凡な意見が成功するケースもある」を、この日の最後に伊賀氏がもう一度取り上げました。今回の講義とワークショップで学んだ起業家たちが、人の心を動かすインサイトを捉えることを意識したビジネスアイデア開発を実践し、イノベーションを起こすような商品・サービスで事業を展開する日が来ることが楽しみです。
講師の伊賀氏は、準備段階から大変辛抱強く、かつ献身的に対応してくださいました。ありがとうございます。