最先端の田舎づくり『神山プロジェクト』~緩やかな人のつながりが生み出す「想像を超える創造」 ~(第10回遠賀町起業支援セミナー)(1月22日開催)
これまで、起業家や専門分野で成功を収めた方々を招いてきましたが、今回は「日本の田舎をステキに変える」というミッションを掲げた認定特定非営利活動法人グリーンバレーの中心人物・大南信也氏にお越しいただきました。徳島の過疎地が20年以上をかけ、いかにして最先端の田舎へと変貌をとげたかを聞こうと、県内外から多くの参加者が駆け付けました。
かつては、高齢化率60%を越えていた神山町。それが今では、商店街が再生され、集合住宅が建設されて、新たな仕事、サービスが生まれている、という事実。16もの企業がサテライトオフィスを構え、クリエイティブな人材が集まっているのには、理由があるはずです。雇用がない、仕事がない、と無いものねだりで嘆いていても地方創生はかないません。「創造的過疎」を掲げた「神山プロジェクト」とは、どういうことなのでしょうか。
戦前にアメリカから贈られた「アリス人形」の里帰りを発端に「とくしま国際文化村プロジェクト」が誕生し、23か国から芸術家が訪れると、神山町に移住する芸術家が出てきました。また一方では、行政と市民の協働清掃活動「アダプト・プログラム」も動き出します。そして、さらにICT(Information and Communication Technology )インフラ等を整え、アトリエの有償提供などをウェブサイトで発信。地域活性は見る見るバージョンアップしていったそうです。
ここで「アイデアキラー」の話。アイデアキラーとは、未知の発案に対し、「誰が責任をとる?」「前例がない」などと言って、動きにストップをかける人のこと。大南氏はこんな時こそ、自分が時代の歯車を回すチャンスと考え、「できない理由より、できる方法を」と乗り越えていきます。「とにかく始めること」の大切さも力説され、阿波弁の「やったらええんちゃうん」を合言葉に、「想像を超える創造」が生まれていったのです。
そして、最初の事業に関わり、共通の成功体験を持った仲間が頑丈なコアとなって、アイデアキラーをも取り込み、若手人材のやる気と本気を引き出すことができたのです。また、人が人を繋いでいった話も興味深いものがありました。個人的な関係、丁寧なつきあいこそが、何かを生む、変化の原動力になるということ。神山町では、空き家の入居者にはクリエイターなど、地域に必要な人材を選び定住に導きました。
地域内経済循環という視点も重要です。都市圏に一方的に流れがちだったものを、地域内で循環させるために、さまざまな知恵を絞りました。働き方や働く場所の自由度を高め、高度な職を呼び込む。新たなサービスを生み出し、観光との連携によって適度な外貨を取りこむ。農業の担い手育成にも着手していく。問題を丸ごとコンサルティング企業にまかせるようなことはせず、「自分事」として、老いも若きも住民自らが動いていることがわかりました。
こだわりのビストロ、外国人が作る地ビール、杉材の食器にギャラリー、「隠された図書館」など、愛する故郷の素晴らしい変化を語る大南氏は、誇りと喜びに満ちていました。そして、参加者の誰もが、「神山町に行ってみたい。」と思ったはずです。さらに、これが遠賀町だったら...と想像もふくらみ、ワクワクした気持ちのまま、セミナーは終了しました。
参考図書:「神山進化論」(学芸出版社)