遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)

遠賀町起業家フォーラム2022『魅力も課題も「体験」から~触れて、感じて、味わうSDGs~』(11月19日開催)

2023年 01月 10日

第7回目の開催となる今回の「遠賀町起業家フォーラム」は、『魅力も課題も「体験」から~触れて、感じて、味わうSDGs~』をテーマに開催しました。

 発表者は九州一円で活躍している多様な起業家6名。「体験から」というキーワードのもと、ご登壇いただきました。

 第1部『地域の魅力を「体験」させる』
 第2部『地域課題を「体験」で解決』
 第3部『地域の「体験」を支える』

 またコロナ禍ということもあり、PIPIT会場とオンラインを合わせての開催となりましたが、県外も含めて多くの方にご参加いただきました。

【第1部】『地域の魅力を「体験」させる』

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『「社長の右腕」から見た、地域系スタートアップの軌跡とこれから』

川上 真生子 氏(株式会社キッチハイク 執行役員 / 地域アライアンス)

 私は株式会社キッチハイクの地域ソリューション担当役員として、主に全国の自治体との窓口を担当しています。福岡出身で大学から東京に出て15年ぐらい福岡を離れていましたが、昨年仕事をテレワークに切り替え、Uターン移住で戻ってきて、地域で活動しています。

 新卒では大手のイノベーション企業に就職しました。中小事業者支援から始めて、社長秘書を経験する機会があり、人が事業をつくって、世の中をつくっていっていることを肌で感じることができ、すごく眩しく見えました。自分も事業を動かしていく側になりたいという思いが生まれました。しかし自分の力を発揮できるのは、自分で起業するのではなく、起業家が考えたビジョンや事業を実際の形にしていく右腕のポジションみたいなところだと思い、2017年にキッチハイクという小さなスタートアップ企業に3人目の社員として入りました。

 キッチハイクという会社は、地域の価値を拡充し、地球の未来へつなぐということをミッションにしています。

 最初は、食を通して地域と、地域の外にいる人をつなぐ『ふるさと食体験』というオンラインイベントを始めました。そのイベントに参加した親子にもっと地域と関わってもらうため、昨年『保育園留学』という事業が生まれました。さらに、地域とのつながりを継続的な関係にしていくため、『つながるDX』という自治体向けのサービスを始めました。今月出たばかりですが、『ニッポンローカルフードギフト』という地域のカタログギフトの事業も始めたところです。

 「起業は楽しいよ!」と私は心から思っています。どこにもなかったサービスをつくり出せるというのは、やりがいがあることだと思います。また、起業しないと出会えない方と出会えます。私も思い切り楽しくやっているので、起業したいと思っている方を応援していきます。

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『高千穂の風景へつながるアウトドア事業の展開』

福島 優 氏(合同会社Trailhead 代表)

 『合同会社Trailhead』の代表として、宮崎県高千穂町のアウトドア事業を展開しています。また、地域とご飯と自然を楽しんだ企画『キッチンハイク九州』の代表と、民間のアウトドア事業者で立ち上げた『一般社団法人九州自然歩道フォーラム』の事務局長もしています。

 中高一貫校で探検部に入り、歩く楽しさを知りました。生まれは東京なのですが大学時代に福岡市を起点に、九州各県の県庁所在地まで歩いたことで「九州は素晴らしいところだ」と気づき、九州にのめり込んでいきました。

 その中で、宮崎県高千穂町が気に入り、アウトドアプログラム担当の地域おこし協力隊として、2020年に着任しました。フィールド調査や企画立案など、地域と深く交わりながら活動する中で、高千穂町に住み続けて取り組みたいと思い、1年活動した上で退任し、合同会社Trailheadを設立しました。

 Trailheadというのは、登山口という意味です。高千穂にアウトドアの入口をつくるという目標で名称をつけました。

 Trailheadの役割は、風景を壊さず、邪魔せず、持続できるようにお手伝いすることであり、地域がどんどん稼いでいき、健やかに暮らして、風景の営みが続けられる環境をつくることを心がけています。

 今やっている事業は、「Trailheadパスポート」「タカチホ棚田キャンプ」「高千穂パックラフト」というものです。「Trailheadパスポート」は登山証明書であると同時に提携している宿で焼き印も押せます。

 11月にスタートした「タカチホ棚田キャンプ」は、農閑期の棚田を使っていない時にキャンプ場として貸し出すサービスで、会員制のサブスクリプション式をとっています。棚田キャンプは、高千穂の山と谷の絶景空間や、地元の方々の受け入れ意識が強みで、高千穂のミニ移住体験を想定しています。

 もう一つ、「パックラフト」という、ゴムボートのアクティビティを今開発しています。最大の特徴はボートを持ち歩けることです。これは通年できるアクティビティであり、悠久の風景とか渓谷を体感してもらえるというのが強みです。

 まだまだ取り組めることがたくさんあり、高千穂を縦横無尽に楽しめるフィールドにしていきたいと考えていますが、その取組として、9月に「高千穂アドベンチャーツーリズム協議会」を設立しました。風景に繋がるアウトドアアクティビティの創出を目指して、協議会がいろいろアクティビティをつくっていき、参加する事業者さんたちがリスクなく収益を上げるようになれば良いと考えています。

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【第2部】『地域課題を「体験」で解決』

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『目の前の気になることを少しずつ解決したい~地域の福祉で少しでも幸せに~』

野村 順子 氏(株式会社はぐくみ 代表取締役)

 千葉市生まれの熊本育ちの転勤族です。国内外を転々とした後に、18年前に熊本に戻ってきました。

 熊本に戻った時に、子育てのための環境を支援したいと考えていました。子育ての環境というのは、子どもだけをどうするかではなくて、まちづくりや、世代間の交流ということが必要だと思っています。自分のスキルを使ってすぐにできることとして、子どもの食育活動と、子どもの宿泊体験を始めました。子どもにはできるだけたくさんの体験と失敗をさせたいと思っていましたし、せっかくするんだったら一緒に他の子どもたちも連れて行こうという発想で続けています。

 私が目指しているものは、地域共生社会の実現に向けて、高齢者や障がい者、子ども・子育て家庭の包括的支援をやっていくことです。

 子ども食堂は、7年前に保育所の一角で始めました。意図的に仲間づくりをする環境をつくりたかったのと、親子で体験ができること、またいろんな活動をしながら地域を好きになってもらい、興味関心をお互いが持てるようになると良いと思っています。

 これまで失敗もたくさんしましたが、たくさんの方に私も支えられています。支えてもらったこの恩を、子どもたちや地域の人に返せると良いと思っています。子ども食堂を立ち上げた時に、みんなで食材の流通であったり、勉強だったり、失敗した時は失敗を共有したりというのができると良いと思い、子ども食堂のネットワークをつくっています。

 やはり私たちには、生きていく上でつながり合う仕組みというのがすごく重要だと思っています。多様性のある豊かな社会をつくること、それから地域の人が地域を支え継続する、こういうソーシャルワーク的な事業の仕組みを構築していくことが重要だと思っています。

 起業したい方へ、今必要なのは未来をデザインする力だと思います。そして、それをどう組み合わせるか、誰とくっつけるか、そういうことがとても大事だと思います。ぜひ頑張ってやってほしいと思います。

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『地域と畑は守る 農家ハンターの挑戦』

稲葉 達也 氏(株式会社イノP 取締役)

 株式会社イノPが運営する「くまもと☆農家ハンター」は、『地域と畑は自分たちで守る』、災害から地域を守る消防団のように、獣害から地域を守る活動を行っております。代表の宮川と私は中学校の同級生で、宮川は洋ラン農家、私はミカン農家です。

 イノシシによる農業への被害がひどくなっています。そこで130人の農家が立ち上がり、これまで専門家に頼んでた捕獲を、自分たちでも免許を取って箱わなに挑戦しています。またサイバー技術やITを使った獣害対策を進めることによって、被害や効果がデジタルで見えるようになってきました。

 ただ自分の農業との両立が大変でしたので、イノPを立ち上げて、解体施設でイノシシの食肉加工を始めています。ハムやソーセージを「九州ジビエ」として誕生させ、新産業を生み出す「ICCアワード」でも表彰いただきました。

 野生イノシシは傷などがあり、獲れた内の2割しかジビエにできず、8割は埋めざるを得ない状態でした。そこで堆肥にする機械をレンタルしていますが返却しないといけなくなり、「休眠預金」という助成金に採択されて、バージョンアップした機械を購入することができました。

 私たちは「農家ハンターサミット」を今まで10回開催するなど、いろんな方に自分たちの活動をお知らせしています。

 鳥獣害対策を、捕獲から解体、販売等一気通貫でやることによって、いろいろな情報やノウハウが蓄積してきました。そこで、ジビエのことを教えに行く活動や、市町村の担当者向けの講習会などを開催しています。

 イノPは、ソーシャルベンチャーとして情報を発信する会社だと思っており、今まで獲る、食べるというところまで来ました。次は「伝える」ところと「体験する」ところです。私たちは人口が減っている地域に住んでいますが、私たちのチャレンジによって、移住者が増えないかとか、面白い人が来ないかと願って発信をしています。また「アグティビティ」と名付けていますが、いろんな農家での体験に繋げられないかと思っています。持続的な農業というのはなかなか難しいですが、続けられるような農村にしたいなと思って進めています。

 今、田舎が注目されてきています。過疎地域には多くの問題があるかと思いますが、マイナスではなくチャンスだと思って私たちくまもと☆農家ハンター、株式会社イノPは、これを解決するモデルとして挑戦しています。

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【第3部】『地域の「体験」を支える』

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『「宝探しのような旅」は、どローカルでこそ創れる~時をデザインできるお役目、ツーリズム事業はおもしろい~』

日髙 葵 氏(株式会社訪う 代表取締役)

 私は宮崎県出身、東京で法人営業を経て、東南アジアを一人で旅をしてラオスに居住、現地企業で働いた後に宮崎へUターンしました。海外居住の経験から、宮崎で海外からの旅人を受け入れる仕事をしたいと考えて、2017年に「株式会社訪う」を設立、夜神楽好きが高じて2020年に高千穂町に会社を移転、自分も引っ越しました。

 「誰もが住みたくなる旅先をつくる」というミッションを掲げて3軸で事業しています。海外進出支援、多言語翻訳や通訳、観光事業で、観光事業に一番力を入れており、着地型専門のガイドツアーをつくっています。

 高千穂と言えば高千穂峡一強ですが、海外のお客様は、自分の心震えるものが見つかるか、自分の時間を使うのに十分な場所なのかということで行き先を決めていくので、どんな旅人にどんな時間を過ごしてもらいたいかというところに集中して商品開発を進めています。

 「Hidden Gem Journeys」という英語話者対象のツアーを、「隠れた宝物を旅の案内人と一緒に探しに行く旅」というコンセプトで開発しています。地元の人を「キャスト」(案内人)として一緒に高千穂を回る旅です。「キャスト」本人がどう高千穂で生活しているか、高千穂をどう感じているかを、彼らの視点で話してもらうことを大事にしており、AIが出せない価値、人間が人間を求めてくるところに重きを置いています。

 地域の伝統文化と何を掛け合わせるということが、私たちの大きなミッションになってくると思っています。ツアープロダクトをつくる時に、「ただこういうことができます」ではなく、もともとある素材と、ゲストの趣味、嗜好と、なぜここなのか、なぜそれなのかという文脈を掛け合わせて、どういう風にお客様に伝えていくか考えて設計しています。

 私が好き過ぎる夜神楽を切り口にしたツアープロダクトを作っていますが、元々神事で女人禁制。将来的に人口が減っていき、継承に課題が生まれるかもしれないという時に、女性も舞えることで解決できる道すじをつくるため、「高千穂さと神楽保存会」を立ち上げました。高千穂の夜神楽への扉を増やすというミッションで、今はメンバー12人で動いています。

 私たち「株式会社訪う」も、「高千穂さと神楽保存会」も、実際にプレイヤーの一人としてしっかり動けるチームで進めていくことで、未来が見えてくると思います。関わって良かったとか、地元の方々が面白いというものを、私たちの次世代の人たちにも少しでも感じていただけるように、人間が人間として楽しめる商品をつくり続けていきたいと思っています。

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『応援購入サービス「Makuake」を活用した新商品開発・新事業の始め方』

宮田 紗良 氏(株式会社マクアケ 九州拠点責任者・セールス局マネージャー)

 私は鹿児島県出身で、Makuakeに入社をして約3年になります。福岡天神のオフィスで、九州沖縄エリアの事業者の、Makuakeの活用をサポートしています。

 弊社では、「生まれるべきものが生まれ、広がるべきものが広がり、残るべきものが残る世界の実現」というビジョンを掲げており、その実現のために、しっかり根を張って地域を理解して、地域の方々に伴走していきたいという思いで、九州拠点を2018年から設けています。

 クラウドファンディングの仕組みを使い、新商品や新サービスを自分で立ち上げて、世の中に発表していきたいタイミングで使っていただくことから、「新しいものや体験の応援購入サービス」と自社で定義しています。日本で一番新しいチャレンジが集まっている場所だと思っています。

 新商品開発の実行者が自分のアイデアをサイトに掲載して、それを一般の消費者がお金を出して応援することができるというサービスで、サポーターとしての消費者に、このサービスに共感したとか、この商品欲しいと思ったという感覚で、新たな消費体験を提供しております。実行者にとっては、商品やサービスを出すことでテストマーケティングができたり、PRができたり、反響の実績がつくれるというメリットがあるものです。

 私がこの事業に関わっている思いですが、入社した1年後くらいに、Makuakeでチャレンジされる実行者の可能性を最大限に引き出すキュレーターという役割になり、実行者に伴走して「こういった部分をより押し出してユーザーさんに伝えていきましょう」というようなコンサルをさせていただきました。そこで、売上だけではなく、リスク少なくチャレンジできて自信がついたというような嬉しい声を実行者からいただき、精神面のサポートもできたのかなと、とても嬉しく思い出に残っています。

 この仕事を通じて、「こんな新事業にチャレンジしました」とか、「新しい商品を開発しました」という方々との輪が広がっていっていることは私の人生にとっても財産だと感じています。Makuakeから九州のチャレンジャーが生まれ、新しいものや魅力あるものがどんどん生まれているという、そんな九州の価値の向上に取り組んでいきたいと思っています。地域で新たなチャレンジに伴走させていただく、最初にご相談いただけるように頑張っていきたいと思っております。

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 講師のプレゼンテーション終了後には、意見交換・情報交換して頂く「交流会」を実施しました。オンライン参加の方からも積極的な意見交換が行われ、講師や会場参加の方々を含めて新しいつながりに結びついたようです。

 今回の起業家フォーラムは、九州各地で活躍中の起業家から直接お話が聞けることで、参加した方々にとって大きな刺激になったようです。挑戦する起業家の出発点や課題解決の工夫などに触れることで、起業に取組むきっかけとなったことでしょう。