遠賀町起業支援ワークショップ「食関連ビジネスの組み立て方」3/15開催
食関連ビジネスで起業を考えている方、起業初期の方、食に関心のある方などを対象として、起業支援ワークショップ「食関連ビジネスの組み立て方」を開催しました。
この日のプログラムは、講義とグループワークの2部構成でした。前半は、先輩起業家が、食ビジネスでの起業体験について講演してくださいました。後半はグループに分かれ、参加者がそれぞれのアイデアをシートに書き出す作業をし、整理され形になった起業プランをグループ内で練り直し、最後に全体発表でさらにそれをブラッシュアップしました。
同じジャンルで起業した先達の経験に学ぶ
講師としてお招きしたのは、商品開発コンサルタント・フードコーディネーターとして活躍し、他にもイタリア菓子・料理の製造販売や料理教室などを展開している金髙 愛氏です。講義では、料理教室からスタートした自身の事業の変遷や、転機となった出来事、そして、起業する際に準備しておくべきだったと思うことなどを紹介してくださいました。
起業するにあたっては、それまでの経験・スキルや人脈が活かせる分野に進むケースがありますが、そうではなく、まったく新しい分野に挑戦するなら、勉強して知識を身につけることが必要であると、金髙氏は言います。そして、もし選んだ道が自分に合っているか疑問を感じたなら、一度立ち止まること、場合によっては、もう一度やり直す勇気を持つことも大切だと会場に語りかけました。
金髙氏は、「自分のやりたいことが実践できる」と、起業の魅力を表現します。たとえどんなに苦労しても、失敗を重ねても、目標をクリアすることで得る大きな達成感は格別だと、参加者にエールを送り、講義を締めくくりました。
起業のビジネスアイデアをグループでブラッシュアップ
後半は、3つのグループに分かれ、講師とPIPITのアドバイザーもそこに加わりました。まずは、ワークシートの項目ごとにアイデアを書き出すことで、プランを整理します。それを終えると、各グループ内の起業予定者が、書き出した内容を発表し、それをグループのメンバー全員で検証し、意見交換する作業に移りました。
この日は、起業を計画中の方もいれば、すでに起業して数年過ぎている方もおり、食関連とその周辺業種の方など、少人数でも多彩な顔ぶれでした。その誰もが自由に意見を出し合い、遠慮なく質問します。そうすることで、各自の課題が浮き彫りになり、そこに新たな視点のアイデアが加味され、プランのブラッシュアップが進んでいきました。
第三者の意見によって、気づいていなかった課題が見つかることがあります。あるグループでは、飲食店開業を数カ月後に控えた参加者が発表したプランについて、駐車場に関する質問がたくさん出ました。駐車場確保は店舗の売上計画に影響する要素ですが、方針を決めていなかったそうです。他にも、味をアピールするキャッチコピーが、むしろターゲットを狭めているのではないかと指摘されることもあったようです。この発表者は、課題が見つかったことをプラスと考え、不安を払拭する大きなヒントになったと前向きに受け止めていました。
ビジネスプランを発表
各グループでブラッシュアップされた3つのビジネスプランが、いよいよ発表され、最初の二人が「飲食店開業」と「野菜の移動販売」という、それぞれの想いを披露すると、また別の角度から意見が出て、さらにプランは醸成されていきました。
ところが、最後に前に進み出た発表者が、食品製造で起業する案を急ぎ足で説明し終えたところで、「でも、私が本当にやりたいことは、このプランではありません」と告白すると、会場全体が驚きました。
食品製造のプランについて、グループ内で説明していたところ、「実現は難しいから」と、発表者が心の奥にしまいこんでいた本当にやりたいアイデアが、思わず口をついて出たそうです。すると、その独自性を、グループの誰もが絶賛しました。そして、その事業で起業することを、口々に提言したのです。
発表者が、食品製造で起業するプランを取りやめ、「本当にやりかたった別のこと」で起業することを決断をするのに、長い時間はかかりませんでした。
起業して、やりたいことをやる
金髙氏が講義で話したように、起業の魅力のひとつは、自分のやりたいことに取り組める点です。そのために最初にやるべきことのひとつが、このワークショップでやったようにアイデアを書き出して、やりたいことを整理することです。そうやって、自分の強みや弱みを棚卸しすることで、最後の発表者の身に起こったような、やりたいことや挑戦できることが見つかる可能性は、誰にでもあるのかもしれません。
とはいえ、この発表者は、プラン全体をもう一度作り直さないといけないでしょう。それでも、進むべき道にたどり着いた今は、そんな苦労など大したことないと、発表を終えた未来の起業家の晴れやかな表情が物語っているようでした。