「地域おこし起業家」~地域を元気に!地域に根を張り、地域資源を使って楽しく暮らそう!~(第25回PIPIT交流会)(5月30日開催)
スピーカーに『地域おこし起業家』として、八女市から森さん、嘉麻市から秋吉さん、宇美町から小林さんの3名をお招きし、第25回PIPIT交流会を開催しました。
それぞれ環境も課題も異なる地域の中で、個性や経験を活かしながら、現場で取り組まれている事業や想いを語っていただきました。
参加いただいた方は、遠賀町はもとより、北九州市など近隣の市町村からだけでなく、県外も含め、実に21市町村からお越しいただきました。
職種も起業家、起業家予備軍、社長、企業人、大学生、地域おこし協力隊、行政職員など50名超える多種多様な方々が集う熱気のある空間となり、「人は人に集まる」ということを、あらためて実感した交流会となりました。
【プレゼンテーション1】****************************
モリビト 代表 森 庄(もり たいら)氏
「自分らしさで共感を呼び、ともに価値をつくる時代の地域づくり事業」
大阪で会社員をしていた森さんは、図書館で『水と緑の国、日本』という書籍に出会い、世界的に類を見ない水と緑に恵まれた日本、そして今自分たちが享受しているそれらの恵みは、先人たちの並々ならぬ努力の賜物であるということに心動かされました。その大切にしたい価値観を胸に、地域おこし協力隊として家族で八女市に移住しました。
農繁期の地元のお茶農家と、豊かな自然や田舎暮らしに関心のある若者を繋ぎ、女子大生やスノーボーダーまでも地域に呼び込んでいます。また、集落にある取り壊し寸前の古民家を皆で改修しゲストハウスを作ったり、さらに地域に面白い人材を呼び込むために「ヤマベリング」というプロジェクトを立ち上げ、オリジナルツアーを組むなど、地域と行政と関わりながら、地域を活性化していくためのさまざまな仕掛けを展開しています。山奥にあるにも関わらず、ゲストハウス『天空の茶屋敷』には今や世界中から宿泊客が訪れています。「空き家を自由に使っていいよ」という地元の方も現れ、皆で改修作業をして、宿泊施設『泊まれる山小屋 yamabering lab』も立ち上げました。
最近は、新しいプロジェクトを起こそうとする人がプレゼンテーションを行い仲間を作る場「ヤメコンバレー」(アメリカのシリコンバレーと八女を掛け合わせたネーミング)も開催しています。活動を始める人を参加者全員で全力で応援するという企画です。
「自分の地域を面白くしていきたいと考えている人には、地域に埋もれている面白い人と繋がるチャンスとなる良い手法。ぜひ遠賀でもやってみては?」とのこと。「ヤメコンバレー」開催当日に懇親会をし、翌日にはプロジェクトが実現に向けて動き出すケースも少なくないそうです。
「八女に関わる人を増やしながら、仲間の輪を広げながら、また、里山との関わり方をどうやってデザインするか、ということをテーマとして、山奥からいろいろな活動をしています。『自然が豊か、水がきれい』そういった価値観に共感できる人たちと、里山の資源を使って楽しく暮らしていきたいです。八女市が八女市らしく輝けるように(東京になる必要はない)、そして、八女市に来る人もその人がその人らしく輝けるように。」と語る森さん。現在は、水害でダメージを受けたキャンプ場の再生(2年後に開業予定)に向けて、また新たな取り組みに奔走されています。
【プレゼンテーション2】****************************
トロワ クロッシュ 代表 秋吉 三鈴氏
「元LVMHグループTOPセラーが地域おこし協力隊!嘉麻市で行った6次化チャレンジ」
「私が主役ではないのが私の起業です。小さな農家さんを応援したい、周りの人のサポートをしていくために起業しました。」
株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドや、株式会社LVMH WATCH JEWELRY JAPAN 「CHAUMET(ショーメ)」で地方売り上げNO.1をはじき出し10年近く業界のトップで活躍されていた秋吉さん。夫の仕事に伴い初めて住む九州で、九州産の素晴らしい農産物に触れ、それがあまりにも安く売られてしまっていることに愕然としました。「自分の持っている知恵を活かして、なんとかしたい!」と、まずは地元や行政の仕組みを勉強しようと、一念発起し、嘉麻市の地域おこし協力隊となり、嘉麻市100%出資の第3セクター「株式会社嘉麻スタイル」に所属しました。
食の輸出サポート、特産品、食の開発、海外交流(インバウンド)を担当し、福岡県初のベトナム梨の輸出に携わり、農家さんと開発した製品が福岡県6次化コンクール1次審査を通過。また、嘉麻市の良さを欧州の方々に知っていただくため、フランスの人脈を活かし、パリより観光モニターを実施し成功を収めたそうです。
プレゼンテーションの後半部分では、昨年「福岡よかとこビジネスプランコンテスト2018」チャレンジマインド賞受賞のビジネスプランを短縮版で、ビジネスプランプレゼンテーションの例として披露してくださり、参加者の皆さんは真剣なまなざしで聴いていました。
「支出の流出額が県内一の嘉麻市の地域課題解決、つまり、産業の創出は、同じような全国の地域の課題解決の鍵ともなり得ます。起業は大変!でも、起業は楽しい!今はシェアの時代です。自分でやれないことはやれる人に任せればよい、コラボすればよいのです。個ではなく手を繋ぐ。チームを組むことのすばらしさを知ってほしいです。そして、小さいからこそ世界と繋がろう!」と力強くプレゼンを締めくくられました。
【プレゼンテーション3】****************************
KOYASU FARM(コヤスファーム)代表 小林 孝昭氏
「ヤギミルクで作ったアイス『うみあいす』で「産み愛す」の想いを全国に届けたい~地元、宇美町での特産品開発~」
先祖代々ずっと宇美町で暮らしてきたという小林さん。地元愛が強く、「何も特産品がない宇美町に新しい特産品を作り、地元を元気にしたい!」と思い立ちました。
宇美町はかつて炭鉱で栄えた町でしたが、それ以前の時代に「宇美町の人たちはどんな思いでここに暮らしていたのだろう」と商品を生み出す際の「拠り所」になるものについて小林さんは思いを巡らせました。
そこで、小林さんは宇美町の歴史や文化に着目しました。宇美町は、日本書紀・古事記の記述では神功皇后が応神天皇を出産した地とされ、これにちなんで「産み」に通じる「宇美」という地名がつけられたといわれ、古くより安産の地として信仰されるようになった町です。かつての宇美町の人たちは、自分たちの町には、子どもの成長や誕生を願うという歴史があることに親しみを感じながら暮らしてきたのではないか、と思い至ります。そして、「子どもの成長や誕生を願うという想いは全国どこでも同じだが、それを商品化/事業化できるのは宇美町しかない!」と開発に乗り出しました。
宇美八幡宮には、大安の戌の日に多くの人が参拝に訪れますが、特産品として販売できるものはありませんでした。そこで、宇美(うみ)町の由来となった「産む」と、鎌倉時代より安産信仰の拠り所であった「宇美八幡宮」、そして栄養価が高く母乳に近いと言われている「ヤギミルク」を掛け合わせ、商品開発を行い、ヤギミルクで作ったアイス『うみあいす』の事業化に取り組みます。全く知らなかったヤギの飼育についても一からすべて自分で調べ、ヤギ2頭の飼育からスタートされました。
製品化の際には、牛乳アレルギーの子どもでも食べられるように、生クリームを使用せず、砂糖も水あめも最小限に抑え、素材の味をそのままにあっさりとした味に仕上げたなど、事業化までのストーリーや、目標金額に対して240%の金額で達成されたクラウドファンディングの取り組みについても語っていただきました。
今後は、子安の木・子安の石などのパワースポットを地域資源として活用したり、最終的には観光名所にもなるようなヤギミルクのプラントも作りたいそうです。
「『うみあいす』の誕生で、周りの方々にも、宇美町っていいとこだよね、と思っていただき、そして宇美町を好きでいてもらうために新特産品の開発に取り組みました。」と語られました。