遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)
遠賀町起業支援施設PIPIT(ピピット)

「多様な拠点により新しいビジネスを生み出す起業家」第40回PIPIT交流会(1月25日オンライン開催)

2022年 02月 10日

 今回の交流会は「多様な拠点により新しいビジネスを生み出す起業家」をテーマに、3名の起業家に登壇いただきました。

 新型コロナウイルス感染拡大防止のため完全オンラインにて開催しましたが、今回も多くの方々にご参加いただきました。

◆起業家プレゼンテーション(18:35~20:05)

◇プレゼンテーション1

「『移住そして起業』ローカルでの生業のつくり方」

 友永 英治 氏(合同会社NOOK 代表)

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 大分県竹田市で生まれ育った友永氏は、高校卒業を機に地元を離れ、広告代理店などで企画・クリエイティブ系の仕事に多く携わってきました。そして3年半前、約35年ぶりに竹田市の地域おこし協力隊として帰郷し、まちづくり会社のプロデューサーとして活動してきました。現在もその会社から業務委託を受けてまちづくりに携わっています。

 2021年7月に自身の会社「合同会社NOOK」を立ち上げ、奥様と二人で運営しています。NOOK(ヌック)とはスコットランド発祥の建築用語で、住宅の片隅にある、こじんまりとした居心地の良い場所のことで、「心地よい暮らしと未来」をつくる会社を意味しています。

 このNOOKでの仕事は、コワーキングスペースの企画と内装、ワーケーションのオーガナイズ(企画)などの他、広告業務として竹田市のふるさと納税支援、コロナ対策として飲食店のテイクアウト支援『竹田おうちでPROごはん』や前売り商品券『たけた未来券』の企画、観光・散策ガイド『竹田城下町おさんぽマップ』の制作などを行っています。

 また、ワーケーションでは、「家族」をテーマにワーケーションの社会実験を先行して実施したところ、相性の良さに気づき、廃校を活用した『祖母山麓ファミリーワーケーション』や、地域の可能性を拡げる『祖母山麓エリア再生プロジェクト』に展開されています。地域が関心を寄せる領域で事業を生み出していくことで、地域とのより深い関係性が生まれています。

 友永氏が実施してきたことは自分が本当にやりたかったことではなく、過去の経験などによって地域から望まれたことをやってきた結果だそうです。地域のことを自分事としてとらえられること、自分の暮らしに直結していることを、特に行政の事業の場合には予算の原資のことも考えて大切に、丁寧に使っていきたいとの想いで活動されています。

 起業を目指す人たちへのメッセージとして、「地域で仕事をつくるならば、まず住むことで本質的な課題が見えてくる。そうでなければ迫力も説得力も厚みもない。そこに情熱があり、スキルと経験を活用していけば仕事につながる」と話されました。

◇プレゼンテーション2

「ポンコツオーナー、投げ銭で泊まれるゲストハウス作りました」

 中村 香純 氏(投げ銭ゲストハウス「さんかくワサビ」 オーナー) 

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 中村氏は都会育ちながら「都会よりも田舎の方が暮らしに良いのでは」と感じていました。アルバイトで得たお金でオーストラリアへワーキングホリデーで行き、帰国後は祖母の介護、重度身体障がい者の自立支援にも携わります。その中で「自分はこのまま小さな世界で生きている人間で良いのだろうか」と考え始め、軽自動車にベッドをつくって、自分のベストな田舎を探す旅に出ました。1年間旅をした結果、日本中どこでも良いと感じるようになりました。その時に、ちょうど「地域おこし協力隊」の制度を知り、佐伯市の募集に応じて移住を決めました。

 地域おこし協力隊としては、英語が話せることから「インバウンド担当」となり、行政では対応が難しかった個人客をターゲットにして、わかりにくい「地域の魅力」を「おじさんの魅力」で表現した『月刊・佐伯のおいさん』として発信してきました。

 佐伯市では、地域おこし協力隊の業務そのものを自分の定住準備とすることができたため、ゲストハウスをつくりました。これが『さんかくワサビ』です。古民家の2階部分ですが、飲食店が多い地域だったこともあり、すぐに人が集まる場所になったそうです。
 中村氏には「起業したい」という強い気持ちはなかったそうですが、その地域に必要とされている、地域の魅力を発信する場所をつくったことで、結果的に起業につながりました。

 ゲストハウスを開業するためにやったことは、「やりたいことの確認」「資金調達」「工事」「保健所の許可」でした。資金調達では、自己資金と借入に加えて、クラウドファンディングを行いました。魅力ある空間にするため、内装にはこだわり、お金をかけました。

 今後の事業展開として、高校生が食事に来るようになったことで、市外から部活のために入学した生徒のための寮を始めます。また、コミュニティスペースを使っている主婦から自分の店を持ちたいとの希望があったため、新たな古民家を借りて貸し出す予定です。
 一つのゲストハウスから広がって地域の需要が高まり、地域が必要としていることを自分に取り込んでいくことを、中村氏は現在楽しんでいるところです。

◇プレゼンテーション3

「分散型ワークプレイスのシェアリングによる新しいビジネスインフラの構築 ~働くをオフィスから解放し、九州独自の新しい働き方の創出~」

 馬渡 侑佑 氏(九州アイランドワーク株式会社 代表取締役) 

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 馬渡氏は大学では建築学部の出身ですが、IT系の会社やコンサル、子ども向けのデジタルアート開発などの業務を経験し、その後は空き家活用の活動などをしていました。その中で、先輩事業者に「分散型ワークプレイスのシェアリング」という構想を話すうちに、会社を立ち上げることになりました。

 現在、全国的にコワーキングスペースが増えていますが、どこにあるか見つけることが難しかったり、運営が難しい面もあります。また、スポットで利用できる施設やカフェ、図書館のようなサードプレイス的な場所が九州では少なく、これらの課題を解決するために『KIW』というアプリをつくりました。
 このアプリによってワークプレイスの検索から、予約、決済までできる他、無人管理の施設ではスマートロックと連動できるようにしています。

 コワーキングスペース事業としては、高速道路のサービスエリア内にトレーラーハウスを置いた施設、商業施設内に設置した個室用ブース、家具メーカーや建築資材メーカーと連携した移動式施設などを運営しています。その他、廃校や旧社宅の利活用も行っており、旧社宅の団地では空室活用として公民館的な利用や子どもの学習利用なども予定されています。また、温泉施設の「まがりオフィス」では和室の空き部屋にオフィスとしての機材を投入するなど、これからは「働きやすさ」や「働いてみたい」場所づくりが大事になると考えています。

 このように、新しい働き方の提案と実証実験を進めており、アプリで予約できる拠点は九州で約20ヵ所にも増えました。また、運営する拠点において九州経済調査協会の地域経済分析プラットフォーム「データサラダ」を一時的に利用できるサービスが始まります。コワーキングスペース+データサラダを利用できるようになることで、投資家や宿泊施設、農業などの分野での活用が期待されています。

 これから大きく変わっていく「働き方」に対して、『「はたらく」をオフィスから解放する』というテーマのもと、九州での受け皿をどう作っていくか、地域ごとに働き方の形を見つけることを始められています。

◆意見交換・質疑応答

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 意見交換では各講師に対して、行政とプロジェクトを進めるための秘訣、投げ銭の目的や効果、働くスタイルの変化による地域の課題等、様々な質問や意見が出されました。

 参加者からは「様々な視点の方々の経験を聞くことができ、大変参考になりました」「事業を展開していくストーリーに共感できました」等の感想をいただきました。

 ご登壇いただきました講師の皆さま、ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。